9話 ページ11
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「うるせえ…」
「…しょ、焦凍?」
どうして焦凍はそんなに怒って居るのだろう。
私は焦凍を怒らせるような事、一切していない。そもそもした事もない。
ずっと焦凍は私を睨みつける。
怖くて氷に覆われたように身体が動かない。
「Aも俺を見てないんだ」
「……?」
「俺じゃなくて、親父のせいで、お前も財産目当てとかそんなんだろ?」
「っ焦凍、ちが」
「違わねえだろ」
何となく、理解した。
焦凍が会ってくれない理由。
でも、違う。私はそんなの目当てじゃなくて、私は焦凍が…
「もう金輪際俺に関わるな……っあ」
「……?」
冷たい顔してた焦凍が戸惑いの表情を浮かべる。
なんで……
「あ、れ…」
何だか頰に違和感があると思い、手に触れた。気付けば、私は涙を流していた。
「っあ、ごめ……わた、わたし…」
うまく言葉にならないまま謝り、すぐに回れ右してその場を離れた。
焦凍が「おい」とか「待ってくれ」などと焦りが混ざった声で言っていたような気がしたけど、全て聞こえないふりをしてとにかく走った。
いつの間にか、違う場所にいた。ここがどこか、分からない。人気が無く、静かな場所。
私はそこで、ただただ泣いた。大粒の雨のようにざあざあ降って。
その涙を舐めると、ほんのり薄く、甘い味がした。
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作者名:ミミ | 作成日時:2017年12月13日 18時