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拾陸 ページ17

あれからというもの、任務の日以外はほとんど毎日霞柱邸を訪れた。
時透さんと一緒に紙飛行機を飛ばしたりふろふき大根を食べたり…
時透さんと過ごす時間は少なくとも私にとっては心地よかった。
無意識のうちに私はだんだんと時透さんに惹かれていた。

「ねむい…」

縁側に座ってふわぁっとあくびをする時透さん。

『少し休みますか?』
「ん。」

それだけ言うとさりげなく私の膝に頭を乗せてすやすやと眠りに落ちた。
最初は興味など示されなかったが、今ではこうして私の膝の上で規則正しい寝息を立てている。
そう思うと随分心を許してくれたのだなと実感した。

『んっ…』

…それにしても。
初めは膝の下まであったスカートの裾がだんだんと短くなってきている気がする。
前田さんが寸法を間違えているのだろうか。
そのせいか、時透さんが寝がえりを打つたびに足に髪が触れて少しくすぐったい。

『ふッ、あっ…』

私は時透さんを起こさないように口許に手をあてて必死に声を押し殺す。

「う〜ん…」

わざとらしく寝返りを打つ時透さんにずっと思っていたことを口にした。

『っ、起きてますよねッ…』

「ふふ、バレた?」

瞬間、目をパチッと開け、ニヤリと口端を持ちあげる時透さん。

『〜っ!もう!』

本当に14歳なのか、この子は。
そうとは思えないほど計算高いというかなんというか…

「ごめん、ごめん。あまりにもAが可愛かったから。」

顔を紅潮させた私に時透さんはにこっと笑ってみせる。
その笑顔には幼さが残っていて愛しささえ感じられた。
私がふっと頬を緩めたとき、扉をノックする音が部屋中に響き渡る。

今度は時透さんが不機嫌になる番だった。

『私が出ますよ。』
「早く戻ってきてね?」

そう言って私の服の裾を掴む時透さん。

『はいはい』

言いながら時透さんの頭を撫でた。


___そろそろか。


私は口許に笑みを浮かべながら玄関へと向かう。
そして、ゆっくりと扉を押した。

____________

________

百合香side

準備は万全だった。
丁寧に結った髪に整えられた服装。
いつもは絶対にしない口紅。
震えた手で扉をノックする。

彼は、私のことを覚えてくれているだろうか。
私の作ったふろふき大根を美味しいと言って食べてくれるだろうか。
扉の向こうに人の気配がして身構える。
おもむろに扉が開き、期待しながらその姿を見つめる。

「え…?」

…が。持ち上げられた口端がすとんと下に下がるのを感じた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 悪女主 , 愛され   
作品ジャンル:ファンタジー
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ゆめっち♪ - 完結おめでとうございます!オチは杏寿郎さんがいいです! (2022年1月8日 15時) (レス) id: 2aa09168c0 (このIDを非表示/違反報告)
アミ(プロフ) - ののか❁さん» わ〜!ありがとうございます!冨岡さんですね、OKです! (2022年1月8日 15時) (レス) id: af4182423c (このIDを非表示/違反報告)
ののか❁ - 今日この作品を見つけて一気見しちゃいました〜!面白かったです!オチは冨岡さんがいいです!投票日に間に合って良かった〜!笑 (2022年1月8日 14時) (レス) id: 2aa09168c0 (このIDを非表示/違反報告)
流希愛 - 続編作って下さるなんて感激です〜!オチは煉獄さんがいいかなと思います♪ (2022年1月8日 14時) (レス) id: 2aa09168c0 (このIDを非表示/違反報告)
りぃな - 完結おめでとうございます!今回も面白かったです✨冨岡さん希望です! (2022年1月8日 13時) (レス) id: 2aa09168c0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アミ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年10月17日 11時

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