La Verité 3 (ページ2)

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裕30 ページ2

ヒナは黙ってワインの栓を開ける。

「...なんや、用意してたん」
「俺が飲もう思うてな」
「ふーん」

はぐ、とキッシュをひと口頬張る。
専門店とも違う、家庭的なキッシュを出すよう
になったのはいつからやったかな。

「久しぶりに食うたけど、美味いな」
「言うとくわ」
「お前は食わへんの」
「昼が遅かったからな」

学校にゴールデンウィークはない。

カレンダー通りに休んで、飛び石に出勤する。
出勤違うか、登校になるんか。てっきりこの画
材屋も連休してるもんやと思い込んでた。

「休みやないん」
「来週末、納入日やってん」
「どこの」
「青山の、ほら」
「あぁ、あっこの画廊か」

連休に合わせてギャラリーも動くしな。

「学校はどうや。あの可愛い妹ちゃんは元気に
してるか」
「元気やで。今日から従妹が泊まりに来るから
やたら張り切っててん」
「それで兄ちゃんはいじけてんのか」

カチャン、と自分でも驚くくらいフォークの音
が響く。食べ終わって置いただけなのに。

「そんなんやない」

氷のぎっしり詰まったグラスに手を伸ばす。

「なんやこれ、炭酸水やん」
「お前、車やろ」

シュワシュワと弾ける炭酸の泡みたいに俺の期
待していたワインの口が萎んで消えた。

「最近、描いてへんの」
「ヒマない。代替教員いうてもそこそこ忙しい
ねん」
「俺、好きやねんけどな」
「何が」
「お前の絵」

ヒナはまたニカッと笑う。

「夜遊びすんなて、妹ちゃんが寂しがる」
「従妹が来てんから寂しがる暇ないねんて」