弍拾肆話 ページ26
「えっ」
いきなりそんな顔をしたAに、今度はコナンが慌てる。
ここまで悲しそうな顔をするなんて、聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか。
そう思って急いで彼女に謝ろうとする。
しかしその前に、Aは悲痛な声で零した。
『い、いなり寿司…っ』
「……Aお姉さん?なに言ってるの?」
彼女はただ、詮索されそうになったら悲しそうな顔でもしてろ、いなり寿司全部ひっくり返したのを想像しろ、という降谷の言葉の通りに動いただけである。
そうとも知らないコナンは、本気でAの頭の中身はどうなっているのかと疑った。なんだいなり寿司って。
とはいえ彼女は結果的に誤魔化すことに成功したらしい。
コナンはそれ以上なにも聞かない。
Aはいなり寿司のショックからけろりと立ち直り、彼の前に正座した。
『頭は大丈夫でございますか?』
「え?Aお姉さんがそれを言うの?」
『え?小五郎様にコナン様は頭痛を抱えていらっしゃるとお聞きしたのですが…』
「あ、そっち…」
もうやだこの人と話してると疲れる。
コナンは思わずこめかみを押さえた。
風邪による頭痛もそれなりにしていたが、なんとか笑顔を作る。
「うん、大丈夫だよ、ありがとうAお姉さん」
『……』
貼り付けられた笑顔にAは口を噤む。
そうですか、と感情の読めない声が零れ落ちた。
そして彼女はなにを思ったか、コナンの目の前に座り直した。
「…Aお姉さん?」
距離がなかなかに近い。
じっと金色の瞳に見つめられ、コナンは小さく後ろに頭を下げる。
するとすぐに、後頭部に手を添えられた。
『ちょっとだけ失礼しますね』
「え、ちょ、なに…」
あろうことかAはまだまだ距離を詰めてくる。
行動の意図が全く読めず、流石にコナンも焦り出す。
けれど、最終的にはただコツンと額が重なり合っただけだった。
ゼロ距離ではあるけれどそれ以上はなにもしない。
熱を測っているのかと思ったが、Aはそのまま離れようとしない。
コナンは不思議に思いながら息を詰めて待つ。
と、その瞬間。
ガシャンッと部屋の扉から大きな音が聞こえた。
ハッとして見ればそこには青い瞳を大きく見開いている安室透。
「……あ、ごめん落とした」
床に落ちた食器はギリギリ割れておらず、彼はそれを回収して気まずそうに目を逸らした。
「いや、うん、ほんとごめん」
「待ってなんか勘違いしてない!?違うからね!?」
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時