弍話 ページ3
わざわざ律儀に正座をし直して、彼女は口を開く。
『私はこの近くの山にあった小さな祠に住んでおりました』
「…え、ってことは神様か?」
『神というほどのものではありせんよ。ただの狐の妖怪です』
「要するに妖狐…?」
『そうですね。零様は物知りでございますね!』
ニッコリと笑って褒められた。
いや待て、なんだそれ。妖怪だと?
そんなものが存在するわけが、と言いかけて、明らかに生き物の感触がした耳を思い出して口を噤む。
…疑っていては話が進まない。とりあえず信じることにして、先を促す。
『えっと…私はその祠で人や人ならざるものの悩みや願いを聞いて日々暮らしておりました』
近くの山って…あれ?でもあの山は確か最近…
「あそこ、住宅地を作るために崩されたんじゃないのか?」
『はい。私が住んでいた祠も取り壊されてしまいました。山の木々も次々と倒され、私は住処を失ってしまったのです』
「…で、人里に下りてきたと?」
『仰る通りでございます。
人に化けて人として暮らしていけばなんとかなるかと…思ったんですけど…』
そこで彼女は頬をかいてヘラリと笑った。
『お恥ずかしい話、あまり人に化けるのは得意ではなくて…
というかいつの間に人の町はあのような恐ろしい場所になったのでしょうか!?
車というものは山の上から見てはいましたが、あんなに速いとは知りませんでした!
何度轢かれそうになったかわかりません!
それに、人に化けたからといってどうにかなるわけでもなくて…町中をさまよって、結局お腹がすいて動けなくなってしまったというわけです』
「そ、それは災難だったな…」
お腹がすけば人に化けることもできなくて、こんな時間にあんな道端で狐耳を丸出しの状態でいたわけか。
…ってことはこの耳と尻尾は見えなくすることも出来るのか?
「1回人に化けてみてくれるか?」
『え?あ、はい。少々お待ちくださいね』
彼女はなんとも古典的に頭の上に葉っぱを載せ、きゅっと目を瞑る。
すると俺が瞬きした瞬間に、さっきまで見えていたはずの耳と尻尾が忽然と消えてしまった。
「…………手品?」
『違いますよ!簡単な術です!!まだ信じてませんね!?』
とりあえず信じるとは決めたものの、さっきから目の前で起こることが非現実すぎて消化しきれない。
彼女は白い肌を紅潮させ、ぷくっと頬を膨らませた。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時