拾柒話 ページ19
降谷side
Aには喫茶店で働いていることは言っていたが、店名までは伝えていなかった。
特に言う必要もなかったし、Aも聞いてこなかった。あの子は俺の仕事に関することはほとんど詮索しようとしないのだ。
それがまさか、ある日突然少年探偵団の子達に囲まれてポアロを訪れるだなんて。
昨日俺があげた上着。見慣れた狐色の髪。大きく見開かれた金色の瞳。腕の中にはなぜか大尉。
Aは世間知らずだけど、賢い子だ。
ちゃんと俺が言ったことを覚えていたらしく、1度開きかけた口を閉じ、その言葉を言い直した。
『とおるさま』
普段とは違う呼び方。
少し言いづらそうに放たれたそれに、周りの子供たちが一斉に彼女の方を向いた。
「透様?」
「Aお姉さん、安室さんと知り合いなのー?」
『あ、はい!親戚というやつです!』
「へ〜!確かに髪の色も一緒だもんね!」
『あはは、透様の髪の方がずっと綺麗ですよ!』
…あれ?なんかあいつ、めっちゃ馴染んでないか?
そう思いはしたものの、諸々の驚きを隠して彼女に笑いかけた。
「こんにちは、Aさん。突然来られるからびっくりしましたよ」
『私も透様が働いていてらっしゃる店とは知らなかったのでびっくりしました!
えーと、梓様という方はいらっしゃいますか?』
Aはそう言って大尉を抱え直す。
よく見れば大尉は少し元気がなさそうだ。
…あー、なるほど。大尉絡みでみんなと出会ってここに来たのか。
心の中で納得しながらバックヤードにいる梓さんを呼べば、彼女はすぐに顔を出した。
「はーい!なんです…え、大尉!?どうしたの!」
『気温が急に下がって体調を崩されたようなのです。少し休めば良くなられるとは思いますが、心配ならお医者様にお連れ下さい』
「そうなんですか!?ありがとうございます!えーと、あなたは…?」
先程の会話を聞いていなかった梓さんに、Aは背筋を伸ばす。
そしてニッコリと笑って答えた。
『安室A、19歳!透様の親戚です!』
…それ自己紹介にするなよって言ったのに。
Aは数日前の夜と同じセリフを口にし、梓さんに大尉を手渡す。
対する梓さんは目を丸くして俺とAを交互に見比べた。
「あ〜!確かに髪色も同じだし美形同士ですね〜!」
子供達と同様に疑いもせず信じてくれた梓さん。
やっぱり親戚設定にしといてよかったと思いながら、子供達が座るためのボックス席を片付けた。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時