拾弍話 ページ14
No side
狐としては300年生きてても人間としてはまだ見習い同然なAの1日は、昨夜も家主が帰ってこなかったことを確認することから始まる。
空っぽのベッドの前を通り、てきぱきと朝の準備をこなす。
そしてそれが終われば葉っぱを頭の上に載せ、耳と尻尾を人から見えないようにした。
人として生きていくには、もっとうまく人に化けられないといけない。
というわけで今は練習中なのだ。
術を保てる時間を伸ばすために、彼女は毎日限界まで耳と尻尾を隠している。
最近は日中ならなんとかそのまま隠し通せるようになってきた。
しかし、この日はそうはいかなかったらしい。
洗濯物を畳みながらBGMにしていたテレビ。
たまたま放送されていたのは刑事ドラマ。
そこから流れ出した銃声。撃たれた警官のうめき声。
それらを目にしたAは、驚きのあまり耳と尻尾を飛び出させてしまったのだ。
『ひえっ…』
ぶわっと逆立った毛が下りる気配はない。
続いて聞こえてきた人々の悲鳴や映された血の色に、彼女は『ひええぇ…っ』と更に尻尾を膨らませた。
*
降谷side
『働かせてください』
「……は?」
俺が帰宅して早々、Aは床に額をくっつけてそんなことを言い出した。
金色の髪が垂れるのを見ながら目を丸くする。
え…?働くって…店とか会社でってことか…?
なんで急にそんなこと…
「欲しいものでもあるのか?」
『そ、そういうわけじゃなくて…』
「じゃあなんで…」
俺の声に、Aはおずおずと顔を上げる。
そして本当に申し訳なさそうに言った。
『警察のお仕事があんなに過酷なものだとは知りませんでした…!!』
「…へ?」
『零様がいつもどんなに危険な場所で働いているのかも知らずに、私は今日もいなり寿司をたらふく食べてしまいました…っ!申し訳ありません!!』
「い、いや…別にいいけど…?」
言われた内容が予想外すぎて頭が回らない。
ワンテンポ遅れてその意味を理解し出した。
……あー、要するにドラマかドキュメンタリーかで警察が仕事をしてるところを見たのか。
Aは床に正座したまま続ける。
『鉄砲という武器があんなに恐ろしいとは…!警察の皆様はいつもあんなものと戦いなさってるのですね…!』
「…別にいつもじゃないし皆様ってわけでもないぞ?」
まぁ俺は割と頻繁にだが。
なるほどな。それで罪悪感を抱いてこんなこと言い出したわけか。
俺は思わず小さく笑って彼女の頭を撫でた。
904人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時