玖話 ページ11
Aが“山”と口にすれば、それはAの祠があった場所を意味する。
もう住宅地建設の工事は始まっていたが、裏側からなら途中まで登ることができた。
やはり急に潰されたそこがどうなってるのか気になるのだろうか。
Aはいつもより少し早足で俺の前を歩く。
「…やっぱり怒ってるか?」
『へ?』
後ろから聞けば、彼女はそんな声とともに振り返った。
「いや…急に山を崩されて、人間を恨んでるんじゃないかと…」
俺の言葉に、彼女はキョトンとした顔で立ち止まる。
そして眉を下げて軽く笑い、また歩き出した。
『まさか。元々人の作った場所に住まわせて頂いてたんです。私はなにも気にしてませんよ』
「そうなのか?」
『はい。山の中に住んでいた妖や獣の中には怒っている者もいなくはなかったですけど』
ここも随分妖が少なくなりました、とAはあたりを見渡した。
…俺にはまったく何も見えないが。
当然だろう。元々怪奇現象やらには全く縁のない人間だったし、そうほいほい妖怪なんてものが見えては困る。
「そういえば、なんでお前は俺からも見えてるんだ?」
『見えてる…というか私が見せてるだけですよ』
「え?じゃあお前、人から姿を見えなくすることができるのか!?」
『あ、はい…まぁそうですね』
えへへ、と笑うA。
なんだそれ。聞いてないぞ。そんなことが出来たのかよ。
てことは初めて会った時に全く気配を感じなかったのもそれでか。
「じゃあなんでわざわざ人に姿を見せて人になろうとしてるんだ?Aも別の山とか神社とかで暮らせばよかったんじゃ…」
『えっ…あ、えーと…それは…』
ここで彼女は何故か焦ったように目をそらす。
そして誤魔化すようにヘラッと笑った。
『まぁ、色々あるんですよ、狐には。縄張り争い的な?』
「ふーん…」
Aは言いながら、道から外れて山の中に入る。
え、待てこんなとこ行くのかよ。完全に獣道じゃないか。
「おい、A?」
『あとちょっとなので!』
「あとちょっとって…どこか目指してるのか?」
『はい!限られた者しか知らない穴場です!』
Aは草をかき分け、パチンとウインクして見せた。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時