壱話 ページ2
いなり寿司しか食べられないのかと聞いたらなんでもOKとのことだったので、とりあえず彼女を家に上げ、いなり寿司に加えて何品か作った。
凄まじいスピードで平らげられていく机の上の料理たちを眺める。
その間も、淡い金色の大きな耳は確かに揺れている。
…作り物、には到底見えない。本当になんなんだこの子は。
聞きたいことは山ほどあるが、随分長いことろくなものを食べていない様子だったから、まずは彼女の腹を満たすことを優先した。
『おいしい……っ!!』
彼女はいなり寿司を口いっぱいに頬張り、幸せそうな表情でそう口にする。
『おいしい…!とても美味しいです…!どれもこれも絶品であります!きっと私はこの日のために生まれてきたのですね…!』
「…それはどうも」
褒められて悪い気がするわけもない。
本当に美味しそうに食べてくれるな、この子…
素直に嬉しくて、自分もいなり寿司を頬張る。
行儀よく背筋を伸ばして味噌汁をすする彼女の尻尾が楽しげに揺れた。
晩飯とも言い難い時刻の食事は、それから程なくして終わった。
結構な量を作ったはずなのに、彼女はペロリと見事に食べきってしまった。
最後に日本茶を飲んで満足そうに息を漏らした彼女は、一転真面目な表情に戻って床に座り手を付いた。
『助けて下さりありがとうございました。
お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?』
深々と頭を下げた彼女に、一瞬迷ってから返事をする。
「…降谷零だ」
『零様でございますね。私はAと申します。
何者ともわからぬ私のような者を家に上げて下さった上に、あのように美味なご飯まで与えてくださり、本当にありがとうございました』
狐の耳と尻尾が眼下で揺れる。
彼女の方はまだ長々と礼の言葉を並べているが、もう半分以上耳に入っていなかった。
これ以上スルーするには気になりすぎる。
俺は我慢ならずに、延々と喋っている彼女の耳を軽く引っ張った。
『狐といえど一飯の御恩は忘れいったああああ!!??』
「あ、悪い」
『え!?ななななんでございますか!?狐の耳を引っ張るだなんてご法度ですよ!?』
「そうなのか?ていうか本物なのか?」
『本物ですよ!偽物なわけがないでしょう!?』
いやこっちから言わせてもらえば本物なわけがないんだが。
次は尻尾に触れようとしたが、バッと勢いよく飛びのかれた。
Aと名乗った彼女は、1度咳払いして居住まいを正した。
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やっち(プロフ) - 更新お待ちしてます (2022年4月24日 5時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ベリナさん» わ〜!ありがとうございます…!!ずっと更新止まっててすみません!中途半端なところですしまた書きますね!!優しいお言葉、励みになります!本当にありがとうございます!! (2019年2月23日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
ベリナ(プロフ) - この作品もう更新はされないのでしょうか、、、?とても好きな作品なのでいつまでも心待ちにしております (2019年2月22日 21時) (レス) id: d785e007a4 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - いちごって美味しいよねさん» こんにちは!いつもありがとうございます〜!こちらもよろしくして頂けると嬉しいです!! (2018年11月16日 7時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年10月24日 21時