お見送り ページ9
Aside
「お前まだ拗ねてんのか?」
『………別に』
太刀川さんの言葉に対してあからさまにそっぽを向いた。
ぷくぅと頬を膨らませても、この決断が変わるわけじゃない。
「遠征行けないからってそんな拗ねることじゃないだろー」
笑いながら太刀川さんは私にそう言った。
遠征……太刀川さんや出水先輩は行くのに私だけ連れてってもらえないなんて、そりゃ拗ねるよ。
でももう出発当日。
遠征艇の前でわがままを言う私を太刀川さんと出水先輩がなだめる光景は、もはや毎回に等しい。
「Aがいたらバカでかいトリオンのおかげで遠征艇広くなるから来てほしいけどなー」
そう言って私を上機嫌にさせてくれるのは当真さんだ。
「もう決まったことだ。変更はできない」
正論をぶちかます風間さん、、、
まぁそーゆーところも好きですけど。
『……私だってもう1人で戦えるもん』
本当はみんなが私を心配して遠征に連れて行かないんだって分かってる。
ボーダーと提携してない学校を長期間休むのも難しいし私の成績ならあまり学校とトラブルにさせたくないんだろう。
それでも駄々をこねるのは、みんなに必要とされたいから。
だって、寂しいものはやっぱり寂しいんだもん。
「もう時間ですよ、風間さん」
菊地原が早くしろ、と言わんばかりに睨んできた。
『あっちょっと待って!!』
太刀川隊の遠征前のルーティン。
「ん。」
そう言って腕を広げてくれた太刀川さんの胸に飛び込む。
『…生きて帰ってこなかったら許さない』
「はいはい」
遠征出発前は必ず一人一人とハグをする。
人はいつ死ぬかわからない。
だからこそ、これが最後の別れになってもいいように体温を感じたいから私の要望で毎回こうしている。
太刀川さんと離れて出水先輩のほうを向くと、
今日は私からじゃなくて出水先輩のほうから抱きしめてくれた。
「あーAのいない3週間とかしんど」
『もう何おかしなこと言ってるんですか』
ほんとこの先輩は冗談ばっかり。笑
すると抱きしめたまま耳元で呟いた。
「……無理すんなよ」
しばらく連絡取れないから心配だわ、とどこまでも過保護な先輩。
『…おむかえ来ますから』
そう約束して、離れた。
みんな、いってらっしゃい。
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作成日時:2021年10月20日 1時