寒いはずなのに ページ25
Aside
「辛いのもしんどいのも全部ぶつけていいから。甘えろよ、頼れよ。もう絶対に、俺のいないところで泣くな」
!!!
この人はいつも私が欲しい言葉をくれる。
そんなの、泣いちゃうに決まってるじゃん。
『…なんっで、、そんな、に、優しいんですか、っ!!』
私の先輩だから?チームメイトだから?
それとも私に家族がいないから?
「さぁ?なんでだろうな…」
答えは教えてくれなかったけど、今日は出水先輩の優しさに甘えることにした。
先輩の腕の中、安心するな…
ん?まてよ、、、
『あっ、えっと、もう、、そろそろ』
家の前で抱き合っていたため、いつ人が通ってもおかしくない。
名残惜しいけど体を離した。
抱き合ってる間に人や車が通らなかったのは奇跡に等しい。
「じゃあ、ゆっくり休めよ。あっ!あと夜眠れないときは今度から俺に電話しろ。いつでも出てやるから」
『えっ、でも、、もし先輩が疲れてたり寝てたりしたら迷惑に、、、』
そう言うと出水先輩は大きなため息をこぼした。
「迷惑なんて思わないし、むしろ頼ってくれないと困るんだけど?」
むむ、、、、そう言われたら頼るしかないじゃないか。
『わかりました。ありがとうございます!』
満足そうに笑った出水先輩を見て、私は家の中に入ろうとした。
あ、コート返さなきゃ!!
『先輩!上着もありがとうございました。寒かったのにすみません』
「ん。俺体温高いし寒いの苦手じゃないから全然大丈夫。じゃあな」
羽織らせてもらっていたコートを返して、先輩とバイバイした。
家に入り、振袖を脱ぐとあることが引っかかった。
あれ?
『先輩って寒いの苦手じゃなかったっけ…』
“柚宇さん柚宇さん、暖房つけてー”
“今日寒すぎだろ!秋どこいった?”
作戦室でも冬はよく出水先輩がそう言ってるのを思い出した。
今日は私のために寒いの我慢してたんだ…
『それはずるいって、、、///』
紳士的すぎでしょ、ほんとに。
でも、今日はおかげで久しぶりによく眠れそうだな。
ベッドにダイブしたら自分でも驚くくらい意識を失うのが早かった。
意識が朦朧とするなか思い出したのは、いつも通り近界民に襲われる家族の記憶…
じゃなくて、出水先輩の笑った顔だった。
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作成日時:2021年10月20日 1時