見守る者【2】 ページ19
〔結成当初〕
俺は別にいいと思ってる。
グループのためにって気持ちもわかるけど、そんなんで揺らぐグループにするつもりないし。
好きでいるだけなら自由やん？
それなのに、無理して諦めようとするから。
『大吾くん、さっき何言おうとしてたの？』
なにわ男子で唯一訛りのない発音。
出身は京都やけど、転校が多かったらしく方言がでることはないA。
西畑「ん？…あーなんやったっけ。ごめん忘れてもうた」
大したことないのに、ほら。
少し俯いて悲しそうな顔をする。
『そっか』
今まで通りおったらええのに。
西畑「…思い出したらまた言うな」
大ちゃんはそう言うと、移動の準備を始めた。
道枝「流星くん、あの二人ってなにかあったん？」
「なんもないで」
呆れるほどになんもない。
そのあと、大橋くんに話しかけられて笑顔を取り戻したA。
大ちゃんの前でもそうやって自然に過ごせてたらええのにな。
見守る。
どんなときも口を出さずに、ただみている。
Aの気持ちに気づいたとき、決めたことだった。
でもときどき、歯がゆくなる。
本当にこれでええの？って聞きたくなる時がある。
Aの決めたことが、諦めるってことならそれでもいい。
けど俺は、忘れられるとは思えないんよ。
ふと、Aと目が合った。
不思議そうに首を傾げるAに、俺は手招きした。
『なあに？』
「なんもないけど」
なにそれ、と笑いながら言うA。
「今日のメイクええな」
『あ、でしょ？ 流星なら気づいてくれると思った！』
嬉しそうに言うから俺もつい笑顔になってしまう。
「Aってメイクどこで覚えたん？」
『自己流だよ。あとはメイクさんに聞いたりとか』
「そうなんや」
やたらとニヤニヤしているA。
「何やねんその顔」
『ほら、周りに男の子しかいなかったでしょ？ だからメンバーとこういう、メイクの話できるのが嬉しいの』
俺も嬉しい
その言葉はなんだか恥ずかしくなってしまって言えなかった。
嬉しい、とか素直に感情を伝えられるAが人として好き。
せやから。
大ちゃんにも素直でいなよ
そう心の中で呟いた。
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作者名：ソルト
| 作成日時：2023年3月30日 22時
