恋・時々雨

悩み ページ13

「そういや、お前、何か悩みごと？」

喜矢武さんが思い出したように私をみた。
すっかり忘れていた。

私は、セッションのことを話した。

「バンドを組みたいとか、人前でドラムを叩いてみたいとか私は思っていなかったから…。」

「まぁ、エアバンドの僕が言うのもなんだけどさ、」

淳さんが言葉を選びながら話し出す。

「ただ時々ドラムを叩くだけの趣味に留めて、変わらない毎日を過ごすのか、一歩前進して平凡な生活を変えるか……
僕は、V系大好きでベースもひいてバンドも組んでたけど、今のゴールデンボンバーに飛び込んで毎日が楽しくて仕方ないよ。」

「ベースひけるんですか？」

「少しだけね。」

と、ウインクした。


「俺もそうだな…。翔と一緒にバンドを組んでいくか、音楽やめて普通の仕事につくか悩んだもんな。」

喜矢武さんが言った。

みさとさんも、右手を挙げて言った。

「私も！芸能人の妻になるかどうしようか考えた。」

「え？そうなの？」

淳さんが驚いている。

「うん。……Aちゃんさ。」

「はい。」

「世の中、１つの道が２つに別れていることなんてたくさんあるんだよね。
別れた先に景色が見えているものと、見えていないものがあったら、人って見えている方を選ぶと思うんだ。」

「安全な方を行くってことだよね。」

淳さんが相づちをうつ。

「でも、安全な方向に行くのは、1人でも行けるんだよね。」

だって、道が分かってるからね。と、淳さんがおつまみのチーズをパクリと食べた。

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