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「俺にはその時、2つ下の妹がいた。
名前は奈津(なつ)。中学1年になったばっかだった。
母さんは奈津を道連れにして自ら命を絶った」
「ど……して?」
切れ長の目が私を見た。
「バカ親父が余所で愛人をつくった。
同じ職場の女だ。その女には子供がいたんだ」
「お義父さんが?」
「信じられねぇか?だろうな」
クツクツと笑うが、その目は笑ってはいない。
背中に嫌な汗が流れる。
「同じ職場だ。俺たちは社宅に住んでた。噂なんてすぐ流れる。そのせいで俺と奈津はいじめの的になった。
俺はそれがきっかけで〈紅桜〉に入ったが、奈津はいじめられ続けた」
「助けられなかったの?」
「…………奈津は『大丈夫だ』ってそればかりで、酷い目にあっても俺の前では笑ってたんだ。
気づいた時にはもう遅かった。
奈津はボロボロだった。
愛人を孕ませた父親の子供だって、毎日のように男にマワされてたんだ。
それを知った母さんは、奈津と一緒に………
第一発見者は、俺だよ。
血の海だった………支えた身体は冷たくて硬かった。
死後2日たってたよ……」
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作者名:ミーコ | 作成日時:2016年8月6日 23時