【n.p.l】この想いを声に【l.n.t.n】 (ページ42)

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42.電車に揺られた時ページ42

Aはメモを片手に、俺はスマホを片手に持って電車に揺られている。俺はブラウザで水族館のリニューアル情報を調べていた。

「俺、ここ行くの高校以来でさ。…懐かしー」

当時の事を少し思い出しながらスワイプさせていき、当時から続いている懐かしいイベントの情報にしみじみとした言葉を漏らす。

『前に行ったことあるって言ってましたね』

「うん。Aも行ったことあるんだっけ？」

『リニューアルしたって聞いて、久しぶりに行ってみたいなぁって思ったんです』

揺れる電車の中で、少し書きづらそうにしつつメモを書いて見せるA。
こうして二人で出かけるのは初めてではないのだが、いつも行先はあの喫茶店で、悩み相談を受けるだけ。
今回は悩み関係なしに楽しめればと思って誘ったのだが、やはり水族館となるとデートを意識してしまう。

「そういやAのお母さん…は多分大丈夫だとして、お父さんとかは大丈夫なん？おっさんと二人で出かけてくるとか心配されない？」

『おっさんなんていいませんよ友達と行くって伝えました』

それはそれで正しいのだが、のちにその友達が二十代後半の男性だと知られたらどうなってしまうのだろうか。
これまで話をしてきて、おそらく父親には俺の事を詳しく話していないのだろうとは薄々分かっていた。
Aの話を聞く限りではさほど厳しいタイプではなさそうだが、後になって知られた時に怒られるのは勘弁願いたい。

電車が駅に到着するアナウンスが流れる。次の駅で目的地の最寄り駅だ。
Aに忘れ物しないようにと伝え、メモ帳とペンがバッグにしまわれる。
俺とAの間の微妙に空いた空間を見ていると、再び電車が動き出した。