【n.p.l】この想いを声に【l.n.t.n】 (ページ11)

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11.反省した時ページ11

『蘭汰さんはどうしてあの場にいたんですか？』

四宮がパンケーキを食べ終わる頃、そんな文章を見せてきた。説明するために頭の中で振り返ってみると、ただの偶然でしかなかったなと気付く。

「ただの偶然。近くの店に買い物しに行ったらあの大学生がいて、そいつらの会話が聞こえたんだけど、あの時はまだ普通に財布盗まれそうになったんだなとしか思ってなかった。四宮が関わっていたとは全然気付かなかった。」

あの大学生の話し声が聞こえたのも、店を出るタイミングも方向も一緒だったのも、公園で四宮を見たのも、本当に偶然。
といっても、公園で四宮を見るよりも先に店に行く前に四宮にすれ違ったのだが、本人は気付いていないようだったので特に言うべき事でもないと思って省いた。

『財布を落としたところを見て拾ったのはいいんですが、メモを準備しようと思ったら盗まれたと誤解されてびっくりしちゃいました』

「そりゃ誤解されるでしょ。せめて声かけてから……ごめん、えっと」

言ってしまったと慌てて口を押さえて訂正し顔色をうかがってみたが、四宮は気にしていないというように微笑んだ。

『大丈夫です。蘭汰さんに意味が違うと言われてから、皮肉なんじゃないかと疑うのは止めるようにしてるんです』

“被害妄想みたいですよね”と付け足して続きを言うように促され、今から言う言葉を頭の中で復唱して確認した。

「…せめて、肩を叩くとかして気付かせてからメモを出すとかすれば良かったんじゃないかな。何も喋らなくても、落としたことは気付きそうだし。」

別に四宮の行動を全否定している訳ではないよ、と言い訳をすれば、四宮自身も分かっていたようで苦笑いをした。

『早とちりしちゃいました』

本人も自分の行動を反省しているようで、分かりやすく肩を落とす。

「難しいよね。…俺も分かる。」

自分の経験に基いた同意をすると、四宮は少し驚いた表情をした。

『蘭汰さんにも、そういう事があったんですか？』

「まあ、俺も完璧じゃないし。誤解することもされることも沢山あるよ」

『蘭汰さんの事を勝手に会話上手の凄い人だと思ってました』

そんな奴な訳ないじゃん、と全力で否定すると四宮はくすくすと笑った。その息から漏れる掠れた笑い声に、また罪悪感が胸を苦しめた。
痛々しい訳でもないのに、腫れ物に触る様に接しそうになる。本人が嫌がりそうだからしないけど。

罪悪感を消そうとして、また音を立てて珈琲を啜った。