第八十五話 ページ46
目を覚ましたら_
「A‼」
「A‼起きたんだね…体調に異常が無いかみるから男どもは出て行きな」
「ぼ、僕太宰さんに連絡してきます‼」
探偵社の医務室だった。戻れたらしい…。
『よかった…。漸く、名前を呼んでもらえた…』
漸く見れた皆の違う表情、科白。何より私を見てくれてる…。本当に戻ってこれた。
***
あの世界でお兄さんの助けもあり私は無事に乱歩さんに出会い_私は、北村さんの手から弾け飛んだ銃を構えた。
『済みません。乱歩さん。貴方の元へ帰る為に貴方を壊します』
引き金を引き、銃弾が響き渡る。目の前の乱歩さんの胸からは血が溢れててもう直ぐ壊れる。
乱歩さんが倒れると同時に私の身体は透けていきこの世界から出れると直感した。
『済みません…』
「……ば、い…ばい。…また…ね」
『っ‼』
乱歩さんは確かに私を見て微笑んだ。ここの乱歩さんは自分が作り出された世界の住人と判ってたんだろうか…。あの紙を見て鍵を当てた時、何かを感じ取ったのだろうか。
流石名探偵です…。
***
「見た所体調に異常はなさそうだね…。眠っている間に何かあったのかい?辛そうだよ」
『…鍵を壊したんです。とても大事な鍵を…本来なら鍵を壊さずに目覚めるべきでした…。それでも私は…私の都合で…』
死んでしまいたい…無我夢中であの世界から出たいが為に、乱歩さんの元に帰りたいが為に、乱歩さんを殺してしまった…。壊すなんて表現で濁しきれない。アレはれっきとした殺しだ。
マフィア現役の時ですら人を直接殺めた事が無いのに…初めて殺めた人物がこの世で一番護りたい人だなんて…
「A」
「乱歩さん、まだ入室許可を出してないよ」
『乱歩…さん。私…私…すみません…』
「大丈夫。僕は生きてるよ」
『え…』
「おかえり。よく帰ってきたね」
『っ…只今…帰りました…』
この人は何処まで知っているのだろうか。あの世界の乱歩さんと記憶の共有でもしてるのか…いや、太宰さん辺りから北村さんの異能の特徴をきき、直ぐに答えを導き出したんだろう。乱歩さんはそう云う人だ。例えどんな世界にいても_。
あの世界の乱歩さんも…亡くなる直前に私を目視した。その瞬間に全て判ったのかもしれない。
だからあの時彼はまたねと云ってくださったのかもしれない…。
だって…あの世界に私は存在していたから……。
死者として。
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作成日時:2020年1月4日 10時