第八十二話 ページ43
この世界から出る為にはこの世界の乱歩さんを殺さなければ出れない。
如何しよう…。殺せないよ。このままじゃ出れない。
視界の端で何時ものように太宰さんを救出している敦君を見ながら対策を考える。
如何にかなるはずなんだ…絶対に。私だって探偵社員、此れくらいの事を解決出来なければ駄目だ。
そう思うけど今の状況が変わる訳もなく時が過ぎていく…。
上手くいけば二、三日で脱出出来る筈だったのに。鍵が乱歩さんだなんて…。
『本当、如何しよう…。北村さんの話を聞いて謝罪でもして異能を解いてもらうしかない?いや、北村さんを殺せば…駄目だ。自分の異能内で殺されるようなヘマはしないだろうし。殺しをしたら中也さん達が護ってくれてた事が無駄になる…』
「君は何時でも中原君だね…。それなのに鍵は中原君じゃないから驚いたよ」
『っ‼北村さん…』
「死ぬのにあんなに躊躇いがないなんて…可哀想に、太宰君の所為で感覚が可笑しくなってしまったんだね」
否定はできないな、それ。感覚が可笑しくなったからこの世界で平然といられたわけだし。
「君がマフィアを抜けたと聞いた時、とても嬉しかったよ。私の元に来てくれると思った」
『え?』
「なのに来ない。如何したんだろうと心配して、私の居場所が判らないんだと思い山を下りたんだ。君を見つける為に探偵に依頼しても其処は無能でね?私物がないなら無理の一点張りで捜そうともしなかった」
私物。礼朗達の所か…
「仕方ないからマフィアの目を盗みながら自力で探し当てた。苦労したよ。苦労して見つけたら君は私の居場所を捜すどころか、また別の奴の隣にいるじゃないか。夢かと思ったくらいだ。その隣にいた奴が君の鍵っていうのも驚いた。如何して私じゃないんだ?」
『さっきから何を云ってるんですか』
様子が可笑しいし、如何して抜けたら北村さんの所に行かないといけないんだ?正直、再会するまで思い出す事すらしなかったのに。
「君は私を追いかけて来てくれたんだろう?時間はかかったみたいだが君の周りはあの太宰君や中原君がいたからね…仕方ないよ。あの二人を欺くのは容易ではないから…。なのに、別の奴の場所で見た事もない笑顔で話をしている。それに、如何してまた太宰君がいるんだ?中原君と連絡を取ってるんだ?可笑しいだろ⁉如何して私の所に来ない?私の所に来ない君なんて…死んでしまえばいい」
優しい笑みから一変、無表情になり私に発砲してきた。
殺す気だ。
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時:2020年1月4日 10時