第五十六話 ページ16
「交渉が拒否されました」
「やっぱりな」
国木田がエボルブルスに連絡を取るも交渉は決裂。Aと会話をする事すら許されなかった。
敦は心の何処かでは話し合いだけで終えると信じていたが国木田からの報告で其れが無理だと判ると顔を拭いたまま動かなくなった。
「今回の相手は異能力者じゃない。ある意味、今までマフィアや組合よりやり難い」
「確かに…一般人に賢治をぶつけたら最悪死人をだすな」
ただでさえ探偵社の実力は異能力者の中でも群を抜いている連中が多い。
そんな連中と一般人をぶつけると結末は火を見るよりも明らか。
「大丈夫、最悪与謝野さんがいるしね。其れに、国木田や谷崎が行けば被害も少ないだろうし…ぶつけるのはこの二人と…敦」
「え…ぼ、僕?」
「そうだ。敦は面識もあるみたいだしね」
「む、無理です…僕が彼の人達を傷つけるなんて…」
「誰も傷つけろなんて云ってないだろう」
「へ?」
乱歩が云うに、国木田、谷崎は最悪の場合に備えて敦について行き、もう一度交渉をする。顔見知りの方が話を聞いてもらいやすいし、恐らく猛、真理辺りは情に暑いだろうと踏んでいる。
「この二人は礼朗より話が通じるだろうし、僕らは無理でも敦なら聞く耳くらいは持ってくれるだろう。その間、僕と太宰でエボルブルスの本部に行く。他はもし怪我人を出してしまった時用に社に残って待機だ」
乱歩の指示に従い各々準備を進める探偵社。
「敦君」
「太宰さん…」
「気負う事はない、この前のような戦争ではないしね。其れにAちゃんは無事だ。彼らがAちゃんを傷つける理由もないしね。何があろうとAちゃんは無事だ」
「はい…その、頑張ります」
「すみませーん。ここ、武装探偵社であってます?」
「あってるわよ。私一度来てるって云ったじゃない」
「来たってしたの喫茶店だろ?」
「その上なんだから間違えないわよ‼」
探偵社員以外の声が二つ。それは今から会いに行こうとしていた猛に真理の姿が扉の前にあった。
「た、猛君…真理ちゃん…」
「ん?あれ?敦…だったっけ?何してんだお前こんなとこで」
「敦?…本当だ。敦君だ。どうして?まさか、探偵社員なんて云わないわよね?」
「まさか向こうから来るなんて…国木田君、電話で喧嘩でも売っちゃったの?」
「するわけないだろう」
乱歩にも予想の出来なかった襲来。敦の心の準備ができぬまま、時は向こうからやってきた。
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作成日時:2020年1月4日 10時