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「さっき部室で会ってさ」
「それがなんで一緒に食べる事に?俺も誘えし」
「だって実習の件で先生と話してたじゃん」
いつもの調子で話しかけられるホン先輩を羨ましく思いながら、なんとなく気まずくて先輩から目を逸らした。
私の後ろを通って隣の席にユン先輩が座ると鼓動が早くなるのを感じた。
「Aはなんで黙ってるの?」
「男のヤキモチは醜いよ」
「うるさいな」
喉の奥が張り付いてしまったみたいに言葉が出てこない。先輩の態度が本当に妬いてるみたいでドクドクと心臓が騒がしくなる。
どうしたの?と、私の垂れる髪を耳にかけて顔を覗き込んできた。
頬を掠める指先がいつもより冷たくて、いやでも視界に入る先輩の顔は不機嫌そうなくせに、前髪の間から見える目は焦ってる様に見えた。
「っ…よ、用事!用事を思い出したので失礼します!」
「えっ、ちょっと!」
居ても立ってもいられずフックに引っ提げてたトートバッグを掴んで、まともに挨拶もしないで席を離れた。
返却しなきゃいけないトレイも下げもせず、後ろから名前を呼ばれても、すれ違った人と肩がぶつかっても足を止めずに無我夢中で走った。
怖かった。
不機嫌な先輩がじゃない。先輩の気持ちを知るのが。
不機嫌が嫉妬からくるものだったら、私に向けられるコロコロと変わる表情や頻度高く返ってくるメッセージ、それらが自分を慕う後輩に向けてじゃなくて、ホン先輩の言うみたいに好意からのものだったら?
私はその気持ちに応えられるだけの物を持ってない。
私は意識の届かない心の何処か奥底で、ホン先輩との距離を縮めるチャンスとでも思っていたのだろうか。
だからあの時『勘違いです』とはっきり断らなかったんだろうかなんて、自答すら出来ない疑問が浮かんでは消える。
傷付けてるのは私で、最低なことをしてるのも私なのに何故こんなに心が痛むのか。
足が地面を蹴るたびに涙がこぼれ落ちていく。
時間的に教授すら居ないゼミ室に駆け込んだ。滅多に酷使されない足の筋肉が震えてその場に座り込む。
息がし難いのは走ったせいなのか、止まらない涙のせいなのか。それすらもわからない。
「…っ…ごめ、ごめんなさい…うっ…ひっく、ごめんなさい…」
トートバッグの中のスマホがずっと震えてる。
誰もいない部屋で、此処にいない相手に謝ったって意味が無いのに、口から出るのは謝罪だけ。
好きな相手がユン先輩が好きであったなら、単純な話で良かったのに。
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和泉(プロフ) - avrillさん» はじめまして!コメント有難う御座います!ちょっと前作に出してた時とは違うジョンハンさんなので不安でしたが、そう言ってもらえると嬉しいです〜!更新時間がまばらですが、最後まで楽しんでいただけるよう頑張ります! (2022年3月28日 20時) (レス) id: 8dc69dfd49 (このIDを非表示/違反報告)
avrill(プロフ) - はじめまして。このお話とっても行動も言動も可愛くて好きです!更新楽しみにしてます。 (2022年3月28日 18時) (レス) @page9 id: dd6824d8fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:和泉 | 作成日時:2022年3月24日 1時