十六夜奇病病棟【小説】 (ページ24)

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レモン色（月side）ページ24

皆さんにとっては初めてかもね、神影月っていう奴だよー。
病院にお世話になってるけど、別に体は健康体そのもの。だから、両親には死ぬほど抗議しちゃいました。てへぺろ。

原因は、今も口内を支配する甘味――私はどうやら、体液が甘くなる病気らしい。
お父さんの知識量をもってしても分からなかった病気。正直、私も興味深いんだよね。
オセの娘、ですから！知識欲旺盛ですよ！

「しかし、この病院ミョーに広いからすぐ迷うんだよなぁ……」
トイレに行ったら、道に迷った。
早く慣れたいもんだぜ。
暇なので、ポケットに突っ込んでたままののど飴を取り出して、口に放る。レモン味だ。口がいつも甘いから、さっぱりとした酸味がいいリフレッシュになる。
「んふー、んまんま」
そのまま舌の上でコロコロと転がしていると、なんだかノってきてしまった。

「ふんふふ～ん♪」
リノリウムの床をスキップで進む。ハイカットのスニーカーは勿論、ヒールのように音を鳴らす訳がない。でも、何処かで見たミュージカル映画の女優になりきって、ステップを踏んでみる。確か、ふわふわのフリルがあしらわれた、真っ赤なドレスを着ていた気がする。
妖精みたいに舞う姿に、憧れを抱いていた。

バレエのようなターンを3回ほど繰り返したところで、事は起こった。
パリンッ！
驚いた衝撃で、
「うおあぁぁぁ!?」
着地の足を捻り、
「あ」
転倒した。
今のはなんだろう。ガラスのようなものが割れる音が聞こえた。
「えぇ、なんか事件……？怖い怖い……」
この状況で1人は怖い。
とりあえず、音のした方に向かえば誰かいるかも。起き上がって、誇りを払って、歩き出した。