彼女が俺に恋する理由（仮）【外見至上主義／翔瑠】 (ページ7)

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部屋とワンピースと俺 ② ページ7

勉強は滞りなく進み、一息つこうとお茶休憩の時間になった。テーブルを挟み向かい合ったAの二度目の私服は、ピョーロの時のキャラＴシャツと比べ随分落ち着いた、清楚なワンピース。それがかえって、自分の部屋に女子がいる、という事実を俺に意識させた。

「岡本くんのお母さん、とっても優しい人だね。色々お話してくれて嬉しかった」
「あー。おふくろ、まだまだ話し足りない感じだったな」

　そう言って苦笑してみせる。どうしても用事が、と泣く泣く出かけていったおふくろは、放っておけば何時間でもAと話し続けそうな様子であった。少し恥ずかしかったが、自分の母親と、自分の……彼女が仲睦まじく話す様は、思った以上に幸せな光景だった。

「なぁ、そういえばもう名前で呼んでくれねぇの？」
「？！え、あ、あれはその、お母さんだって岡本さんなのに、岡本くんと呼ぶのは変だなと思ったからで、その、」
「なーんだ、寂しいの」

　軽い雑談として振った話題だったけれど、Aの慌てっぷりに、スネたふりをしてみる。自分だって「A」と苗字で呼んでいることを棚に上げ、どうしたものかと必死で考えるAを見るのは何とも面白い。

「じゃあ、その……翔瑠くん……？」
「？！」

　あ、何だこの不意打ち。戸惑いでかすかに潤んだ目が、これでいいのだろうかと少し傾げた首が、あらためて自分の名を呼ぶ可愛い声が、Aの全てがクリーンヒット。
　先日以上に赤らんでいるだろう顔を、それも今日は正面からまじまじと見つめられていることが悔しくて、俺はささやかな反撃をする。

「……A」

　瞬間、一気に染まる彼女の頬。多分、今、俺たちが考えていることは同じだろう。俺はAの隣に席を移した。

　唇にあたる柔らかい感触、抱き寄せた華奢な体。薄々気づいていた感情が確かなものになる。俺は──もうどうしようもないくらいに、AAに恋していた。