部屋とワンピースと俺 �� ページ6
「うぅ、緊張する……」
家へと向かう道中、二人してそわそわしっぱなしだった。Aの緊張はうちの家族と会うことに対してだろうけど、俺は別のことが気がかりでならない。いや、アレとかアレとかはちゃんと見えない所に隠したはずだし、大丈夫……だよな、昨日2時間も掃除したし。
先日のテスト結果にあまりの差があったことに絶望感を抱いていたところ、Aが勉強を教えてくれるということになって。開催場所は俺の部屋に決まって。付き合っている彼女なのだから、家に招いたって何ら不思議はない。けれど、ほんの少しの下心もないかと問われたら、すぐには肯定出来ない。
「おかえりー……え、女の子？」
玄関を入ると、ちょうど廊下を通った母親に出くわした。突然の来客に驚く様がありありと見て取れる。そりゃそうだ、うちに呼ぶ人間なんて、後にも先にもバスコくらいだったから。
どう紹介したものかと思案していると、先に沈黙を破ったのはAだった。
「初めまして。岡も……翔瑠くんとお付き合いさせていただいている、AAと申します。今日は、一緒に勉強しようということになって、お呼びくださったご厚意に甘えてお伺いしました。突然お邪魔して、すみません」
「「？！」」
さっきまでの緊張はどこへ行ったのかというほど流暢な挨拶に驚いた。A家に招かれる側になったら、俺はこれ言えるか……？
ささやかですが、と渡された手土産も、どことなく品のある包みだ。もしや、こいつ割とお嬢様か？
おふくろはAのことを随分と気に入ったようで、「どうしてこんな時に、お父さんもお婆ちゃんも留守なのかしら」と残念がった。そうだな、ばあちゃんにもAのこと紹介したい。ばあちゃんきっと喜ぶだろうな。
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作者名：いざちよ | 作成日時：2019年11月11日 0時
