彼女が俺に恋する理由（仮）【外見至上主義／翔瑠】 (ページ2)

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俺が彼女と付き合う理由ページ2

そして、今日。俺は件の話題を実に数日ぶりに思い出したのである。理由はいたって明確で、目の前の女だ。

「岡本くんが好きです」

　下駄箱に、校舎裏へ来いという旨の手紙が入っていて、果たし状かと来てみたら見知らぬ女生徒がいて、そして先ほどの発言。まったくベタな展開のこれは、おそらく愛の告白とかいうやつだ。
　多分、例のゲームの存在を知らなかった頃の俺なら、テンパって、舞い上がって、相手をよく知らないままに了承していただろう。けれど今は、バイトの店先くらいでしか言葉を交わすことのない「女」という生き物を眼前にしてもなお、ひどく冷静な自分がいた。

「えーと、まずさ、あんた誰？」
「ごめんなさい……！！コンピューター学科の、AAです」

　やはり名前に聞き覚えもない。建築学科とは気風も物理的距離も正反対の、この女に俺とどんな接点があったというのだろう。
　相手に気づかれないように、静かに辺りを見回す。少なくともすぐ近くに仲間が隠れているわけではなさそうだ。
　いっそ直接、ゲームなんじゃねぇのかと訊いてみようか、と喉まで出かかった言葉を飲み込む。もしこれが、アイツらの言う“罰ゲーム”だったら……？
　正義の味方でも気取りたかったのだろうか。俺は赤の他人が万が一にも傷つくことより、自分自身が笑い者になるかも知れないほうを選んだ。

「いいぜ、付き合っても」

　緊張の糸が切れたからか、はたまた純粋な嬉しさからか、はにかむ彼女に少し心が揺れたのを、今でもよく覚えている。
　これが、俺とAとの馴れ初めだった。