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第66幕 早く ページ21

今は一刻を争う。

早くサヒアと鯉伴を医者に診せに行かなければ。
特にサヒアだ。
未だに血が止まらない。その上意識がないと来た。
鯉伴が傷口に手をかざし、特殊な治癒能力で癒しているが、何故か一向に治る気配がない。

鯉伴は焦りと戸惑いで目を見開く。


治らねぇ…!?

どういう事だ…っ!


このままではサヒアは命を落としかねないだろう。
呼吸も危うい。



「サヒア…?ねぇ、起きてよ…」

「リクオ…」


リクオはサヒアの側に駆け寄り、赤く染まった小さな手を両手でぎゅっと握る。
その手は微かだが、震えていた。


「起きたら、いつもみたいに笑って、抱き締めてくれる?手も…僕があっためたら、あったかくなる?」


冷たい手。閉じた瞼。血に染まる身体。

一人の子どもが泣きそうになりながら、こんなにも頑張っているのだ。


リクオが頑張ってんだ。

俺も…頑張らねぇとな!


治癒能力が効かない。
なら、次の手段は………



「その娘の父親…だと?」

「そうだけど、何」

「……」

「羽衣狐様?」


そんな晴生と羽衣狐の会話が聞こえた。
晴生の返答に少々驚いているようだ。
彼は鞘から抜いてはいないものの、今にも飛び出しそうに構えている。
すると、羽衣狐はふっと笑みを零した。


「なるほどのぅ…。今回は分が悪い。帰るぞ」

「な、何故ですか!?今しかない機会ですぞ!?」

「分が悪い、と言っただろう。妾の言う事が聞けぬのか?」

「い、いえ…。で、ですが…!」

「まだ“機”ではない」


それだけ言うと背を向け、去る羽衣狐。
その後ろを慌てて追い掛ける鏖地蔵。

二人の姿が見えなくなるまで、晴生は構えを解かなかった。
そして、二人は姿を消した。


「逃げた…いや、見逃された?」

「…鯉伴。君の屋敷に行こう。良い医者はいるかな?早く君とサヒアの怪我を診てもらわないと」

「ああ。つか、あんたは…晴生は“俺達”の事知って…」

「知ってる。妖怪、でしょ?君は半妖だっけ?そういうの全く気にしてないから。と言うか、サヒアが気にしてないんだから、僕が気にしても仕方ない」


ふぅと息を吐く晴生を見て、この親子は不思議だな、と鯉伴は改めてその時思った。
だが、口には出さなかった。


「ほら、立って。リクオ君も」

「うん…」

「鯉伴、サヒアを絶っっ対落とさないでよ?」

「わぁってる!」


そして、三人は奴良家まで走った。



晴生は抱えられてるサヒアを見て、目を細めた。



「また無茶して…」

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(プロフ) - 続きめっちゃ気になります! (10月3日 23時) (レス) @page25 id: 1fc4502f62 (このIDを非表示/違反報告)
チカ - 続きが気になりマックス (2018年6月27日 22時) (レス) id: 7c63f912f8 (このIDを非表示/違反報告)
アニメラブ(プロフ) - 面白い!!続きが待ちきれない (2017年12月22日 22時) (レス) id: 9491c8ca0e (このIDを非表示/違反報告)
春歌 - 続きがすごく楽しみです♪ (2017年11月25日 12時) (レス) id: b5a85efb84 (このIDを非表示/違反報告)
サヒア - 皆様〉応援ありがとうございます!今更ですが、頑張ります! (2017年8月29日 15時) (レス) id: 1d3fa82ba1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:サヒア | 作成日時:2015年2月23日 15時

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