【アルスマグナ】トキメキ症状【短編集】 (ページ4)

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可愛いって言ってページ4

課題も片付いた日曜の午後、何をしたらいいのか分からなくて退屈する私。

目の前には、そんな私をよそに数学の予習に黙々と取り組む私の彼氏、奏くんの姿がある。

せっかく部屋に呼んだのに勉強なんて…本当は構って欲しかったのに…。

私は、ずっと彼に向けて構って欲しいという念を送り続けているのだが、全く反応が帰ってこない。

しびれを切らした私は、彼の服の袖を摘むように引っ張って言った。

「…ねぇ、…構って欲しい…んだけど…。」

普段あまり積極的ではない私は、恥ずかしさに俯きながら、視線だけで彼の表情を伺った。

すると、突然塞がる視界。

気づくと私は彼の腕の中にいた。

「…え？ちょ、ちょっと！急にらしくないことしないでよ。ビックリするじゃない。」

てっきり「勉強が終わってからにしてください」などとあしらわれると思っていた私は、彼の意外な態度に戸惑う。

「構って欲しかったんでしょ？それに、可愛いと思ったら抱きしめたくなるのは当然です。」

言われ慣れていない事を耳元で囁かれ、またもや恥ずかしさに思わず赤面してしまう。

「奏くんって偶にそういうこと平気で言うから狡い。」

私は、一呼吸置いてから声を落ち着かせて言い、精一杯の平常心を取り繕ってみせた。

「お望みであれば何時でも何度でも言ってあげますよ。」

奏くんが少しニヤッとして返した言葉は、私の平常心をいとも容易く奪い去った。

私は、嬉しくて恥ずかしくてどうにかなりそうだった。

しかし、この辺りで降参しておけばよかったものを、私は酷く強情であった。

なけなしの力を振り絞って更に強がってみせたのだ。

「……もう一回、可愛いって言って…？」

高鳴る鼓動と熱くなる頬を誤魔化しながら恥ずかしさに何度も打ちのめされた声は、蚊の鳴く音よりも小さかっただろう。

彼は、少し間を置き、落ち着いた声で囁いた。

「愛してる。」

私は一気に崩れ溶けた。降参、まいりました。

「可愛い…」

そんな私に微笑みかけるように、小さな声でボソッと呟かれたその言葉を、私は聞き逃さなかった。