一粒の砂２ (ページ8)

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小さき蕾は咲くか８ページ8

またやってきた無言の時間。

雅紀はジーッとカップの中のライオンを眺めている。

俺のウサギはニコッと笑っているのに、雅紀のライオンは涙を流していた。

それは岡ちゃんが雅紀に送ったメッセージなんだろう。

雅紀がどうしてここに俺を連れてきたか、岡ちゃんはきっと知っている。

「・・・ラテアート」

「えっ？」

急に声を掛けられて驚いたのだろうか。

雅紀は大きく目を見開かせてヒュッと顔を上げた。

「初めて見た」

「うん。可愛いでしょ？」

「あぁ」

「俺も最初のラテアートは岡ちゃんのうさぎだったなぁ」

「だから俺のはうさぎなんだ」

「たぶん」

「・・・雅紀のはライオンだな」

「・・・」

「ライオンが泣いてる」

「・・・」

俺が岡ちゃんのメッセージを読み解こうとすると、雅紀はまたライオンと睨めっこを始めてしまった。

「雅紀」

「・・・」

「大丈夫。ゆっくりでいい。時間はたっぷりあるから・・・」

「翔ちゃん」

「ん？」

「ごめんね」

「・・・何が？雅紀は何も悪いことをしてないんだから謝るな」

「・・・ん」

雅紀が暫く考えるようにして黙ると、カップに手を添えて口に運んだ。

カチャ

そのカップがソーサーの上に戻ってきた時。

泣いていたライオンはいなくなっていた。