一粒の砂２ (ページ7)

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小さき蕾は咲くか７ページ7

「・・・」

「・・・」

店主が去った後、２人だけになってしまったこの空間は沈黙で埋め尽くされていた。

『素敵なカフェだね』とか

『よく来るの？』とか

『誘ってくれて、ありがとう』とか

切り出す言葉はたくさん持っているはずなのに、目の前の雅紀の様子に言えずに、グラスをクルクルと回し氷で遊ぶことしか出来ずにいた。

その様子をカウンターから見ていたんだろう。

２つのカップをトレーに乗せてきた店主は苦笑いを漏らした。

「なんだか君達、初デートみたいだな」

初デート・・・それならまだマシな気がする。

まだ相手のことを知らない真っさらな状態なら、この沈黙も可愛らしいものに違いない。

だけど俺と雅紀は２年以上の付き合いだ。

それなのに『StorM』以外で会うことはなかった。

そんな相手から急な誘いを受けて、沈黙なんかされてしまった日には、俺はどうしたら良いのだろうか。

待つしかできないんじゃないか？

俯いていると、カップが目の前にやってきた。

そこにはふわふわの泡に可愛いうさぎが描かれていて、俺は思わず声が上がった。

「あっ！すごい！！」

さっきまで沈んでいた気持ちが初めて見るラテアートに興奮してしまい、俺は雅紀のには何が描かれているのか気になって身を乗り出して覗き込んだ。

「えっ？」

俺の声に雅紀は、少し困った顔をした後、店主を見上げた。

「岡ちゃん・・・」

雅紀が縋るような声を出すと、店主・・・岡ちゃんは、雅紀の頭をぐしゃっと撫でた。

そして、ごゆっくり。と俺に言うと、また２人だけの空間になった。