一粒の砂２ (ページ6)

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小さき蕾は咲くか６ページ6

カフェまでの道、雅紀はいかにパンケーキが美味しいのかを身振り手振りをして楽しそうに話す。

でも、いつも見ている雅紀と話す速さとか、テンションがちょっと違っていて、雅紀も緊張しているような気がする。

「翔ちゃん、ここ」

そう言って雅紀が止まった場所は、吉祥寺駅から井の頭公園へ向かう住宅地の中にひっそりと建つ小さなカフェだった。

雅紀は真っ白な壁に濃い緑が映えるドアを開けるとカウンターを覗いた。

「・・・２人なんだけど」

すると、背の高いくるくるパーマの丸眼鏡をかけた若い男性が雅紀の後ろに立つ俺を見てニコッと笑った。

「いいよ。好きな席座って」

「うん」

雅紀がカウンターから少し離れた席を選ぶと、店主はメニューと水を俺達の前に置く。

「今日はどうする？」

「うん・・・翔ちゃん」

「ん？」

「たくさんおススメあるんだけどね。俺、どうしても翔ちゃんと食べたいのがあって・・・それでもいい？」

「いいよ」

「ありがとう」

雅紀が『俺と』と思ってくれた気持ちが嬉しくて、それを承諾すると、雅紀は店主を見上げ注文をする。

「あのね、岡ちゃんが俺に最初に淹れてくれたやつ・・・あれを翔ちゃんに見せたくて」

「あぁ、いいよ」

「後、いつものパンケーキも」

「了解」

岡ちゃんと親し気に呼ばれた店主はオーダーを受けると、再び俺に微笑んでカウンターへと消えて行った。