金木犀【treasure】 (ページ16)

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16、なんともページ16

エスプレッソをタンピングして、
マシンにセットするとポタポタとゆっくり抽出されていく。

ピッチャーにミルクを入れてスチームをすると
チリチリという心地良い音がする。

抽出したエスプレッソとチョコレートソースをマグカップに入れ、
しっかりと混ぜる。

そこにゆっくりとスチームしたミルクを注ぐ。

ふわふわとしたキメの細かい泡を潰さないように注ぐその過程は
何度やっても飽きなくてワクワクする瞬間だ。

「お待たせしました。

　ホットのカフェモカがお2つと、カフェラテ、カプチーノです。
　パンケーキはもう少々お待ちください。」

「「ありがとうございます！」」

「「わぁ〜、ふわふわだ」」

「「俺のハート型になってる可愛い！！」」

こんなにリアクションをくれる人もあんまりいないから
なんだか、ちょっと嬉しくなった。

「では、失礼します。」

「「あの、、！！！！」」

ドリンクも出し終わったし、よしのり君達のとこに行くか、
と彼らに背を向けると、一人から声がかかる。

「、、、はい、？」

あ、この人パンケーキ食べたくてって言ってた人だ。

「「あの、Aさんですよね、、？」」

「あ、、はい、。」

え、なんで知ってるんだ。

「「えっと、、ここのカフェのSNS見てて、
　ずっと可愛いなって思ってて、。
　あの、、、彼氏いますか、、？」」

そう少し耳を赤くしながら聞いてくる彼。

なんだか昨日のよしのり君を思い出したけど、
彼を見てもなんとも思わないから不思議だ。

「はい、います。」

「「あ、、、、ですよね、。
　すみません、、、。ㅋ」」

恥ずかしそうに謝られて、
友達もいるのになんだか申し訳ないななんて思うけれど、

でも彼氏いるのは事実だしな。

彼氏がいないなんて嘘はつきたくないし
そんな嘘つく理由がない。

「いえ、、、。
　パンケーキすぐにお持ちしますね、少々お待ちください。」

今度こそ、「失礼します。」と言って歩き出す。

後ろからは「どんまい。」とか、
「まだ無理って決まったわけじゃないし諦めんな！」とか
彼を励ます声が聞こえる。

いや、彼氏いるって言ったよな。私。

そう思いながら歩いていると、
今度はスヨン達がみんなこちらを見ていて、

よしのり君とバチっと目が合うと、
顔ごと目を逸らされてしまった。

不安にさせてしまっただろうか。

ふと、店長と先程話していたことが頭に浮かんだ。