最初の犠牲 ページ6
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これは酷い夢、信じてはいけない。
みんなで助かるために、俺は逃げる。
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闇が一転して眩い光に包まれる。
開けていられずに瞳を閉じた次の瞬間、身体が重力の感覚を取り戻した。
足と膝に床の硬さを感じ、恐る恐る目を開けた彼らが一番最初に写したのはよく知る仲間の姿だった。
その事にとりあえず安堵し、けれどほかの四人姿がどこにも無いことに頬を引き攣らせる。
そして彼らはそれぞれに立ち上がり、ぐるりとその場所を見渡した。
三組がそれぞれ飛ばされたのは六畳程度の閉ざされた部屋だった。
くすんだ金の装飾が施された緋色のソファーと猫脚の四段のキャビネット。その隣には衣装のないハンガーラックのようなものがあり、そして壁際には同じデザインの鏡台が三つほど並んでいた。
レトロな楽屋といった印象のその部屋を、壁に飾られた橙色の照明が暖かく照らしていた。
どこかに繋がるらしい扉は一つあるけれど、窓はなく、外の様子は伺えない。
けれどホールと似た印象から、あの建物のどこかなのかもしれないと予想する。
何の為にここに連れてこられたのだろう。
他のメンバーはどこにいるのか。
───無事、なのだろうか。
偶然が選んだ彼と目を合わせる。
頷き合い、部屋の外に出てみようと鈍色のノブに手を伸ばした。
その時。
低い管楽器の音から始まるクラッシック調の音楽が奏でられ始めた。
思わず動きを止め、辺りを見渡す。
再び心臓が緊張に震え、表情が強ばった。
『大変お待たせしました。歌劇Blindekuhおにごっこ出演の皆様。開演の時間となりました』
暗闇に引き込まれた時と同じ声が響いた。
それと同時に、窓のないそれぞれの部屋の壁に、二枚の画像が大きく映し出された。
そこに描かれたのは案じていた見慣れた姿。歓喜の声が上がり、不安に傾いた心に力が宿る。
北「涼太さん見て！みんなが」
涼「臣さん、聞こえる？」
臣「聞こえるよ。みんな怪我はない？」
健「なんや、元気そうやんか」
亜「元気なわけないですよ」
颯「僕達の部屋は鍵が掛かってるみたいです」
颯太が扉のドアをガチャガチャと回し、困ったような声を上げた。
それを見て北人と健二郎も慌てて動く。
北「こっちもダメだ」
健「ここもあかんな」
臣「なぁ、俺たちをどうするつもりなんだ！」
臣が天井に向けて声を放った。流れ続ける音楽が、力を取り戻したはずの心にじわりと焦りを植え付ける。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえると凄く嬉しいです…！期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します！ (2020年4月21日 1時) (
レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます！これからも、楽しみにしてます！ (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霙 | 作成日時：2020年3月3日 15時
