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有無を言わさずに腕を掴むとキツく睨まれた。
傷を負わされたことで恐怖からやけっぱちの怒りへと感情がスイッチしたのかもしれない。
もがいて振りほどこうとするのを許さず、引きずるようにして連れていく。

罪悪感には目をつぶった。非難は正気になった颯太にいくらでもしてもらうつもりだった。

だから今は、見られてるままの鬼でいい。

亜嵐は抵抗されながらも強引に颯太を部屋へと押し込んで転がすと、重い扉を閉じた。

この部屋のことは北人に聞いた。
不自然に扉や壁が厚く窓のない部屋がある。防音室かもしれないから、隠れるには最適かもしれないと。
扉についていた閂状の鍵は万一の時に多少の時間を稼いでくれそうだった。

鍵に触れてため息を吐いて、ゆっくりと振り返る。閉じ込められてもなお、颯太はまだ諦めていなかった。
座った姿勢でずり下がりながらなにか手がないかと必死に辺りを探っていた。

どうすれば彼の魔法がとけるのだろう。
それとも、一生、このままなのだろうか。
いつか解けるなんて、そんな保証はない。



「来るな!」

「ヤだよ」



亜嵐は距離を詰めると颯太のニセモノの髪に触れた。触るな離れろと暴れる手を無視して一束掴み、そして強く引っ張った。



「女装なんか似合わないって、お前には」



そして亜嵐は彼の首根っこを掴むと、白いワンピースの長いスカートの裾でその顔を拭いて薄く施されていた化粧を拭いとった。



「や、め……っ、何、するのっ!」



必死に抵抗する颯太の顔が、亜嵐のよく知る彼のものに戻った。戻らないのは、その頭の中だけ。



「颯太」



亜嵐は、颯太を抱きしめた。
その腕の中で颯太が必死にもがく。けれど暴れれば足首の傷が痛むのか、跳ね除けるほどの力はない。

亜嵐はキツく目を閉じ、全力で逃がさないように抱きしめた。小声で彼の名を呼び続けた。


──思い出して。この声を。
願いはたったひとつ。 だけど叶える方法が分からない。


そのまま、どのくらい時が経っただろうか。
威勢のよかった颯太の抵抗が、次第に弱まってくる。
そして、脱力した彼はやがて小さく呟いた。



「ごめんね、亜嵐さん……やっぱり、僕、亜嵐さんが好き。だから……」


▽→←△



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(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月3日 15時

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