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そんな彼が、焦ったように「あっ」と声を上げたのは、青と緑の光が最初の定位置から動いた時だった。
彼らの進む方に動いていく無色の光があったからだ。
「臣さん!ダメですよ!そっちは!!」
届くはずがないと分かっていても声が出る。
分かっているのに、何も出来ない。
そして、ふたつの光が逃げる動きを見せたあと、無色の光に青が立ち向かって取り込まれて消え、己の無力さを痛感させられる。
「なんで……」
頬を何かが伝って落ちていく。
やがて青の光は違う場所に灯ったけれど、それが何を意味するかを知る術のない北人は、戸惑うことしかできなかった。
分からない現状、伝えられない状況。
不安でもどかしくて、無力で、孤独で。
頭がおかしくなりそうだった。
だけどこれが、生贄という立場に課せられた重荷なら、甘んじて受け入れなければならないこともわかっていた。
望んだのは自分。
だから、勝手に壊れるわけにはいかない。
『信じてますから。涼太さんのことを』
『俺も、北人を信じてるから』
涼太と交わした約束。
その約束が、辛うじて北人を支えていた。
「……しっかりしろ」
自分に喝を入れ、きつく拳を握る。
それでも、 このゲームはどこまでも非情だった。
流れていた曲が変わったあと、次に動き出したのは水色の光だった。同じ場所にあった紫の光は、何故だか動かない。
また喧嘩してしまったのだろうか、こんな時なのに。
「颯太……?」
水色の光にはなにか目的があるのか、時々隠れながらもどこかに向かっているようだった。
近くに二体の鬼がいることに気づいたのか素早く柱の陰に隠れたのに、少しの間のあと、彼は逃げずに鬼に向かって突進した。
「な……っ!!」
小さく悲鳴が漏れたけれど、三つの光が交わりあったあと、水色の光だけがその場を出し抜いた。
ホッとするのも束の間、その光が、次第にホールに近づいてくる。逃げ場のない三階のバルコニー席に。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霙 | 作成日時:2020年3月3日 15時