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「ごめん。俺はそっちには協力できない」
キッパリとそう言いきった亜嵐に、涼太は優しく目を細めて頷き、それから表情を引きしめた。
「分かってるよ。亜嵐くんはそれでいいと思う。でも、大丈夫なの?あの話が本当なら……」
「大丈夫だよ。殴られても、殴られすぎて顔が変形しても、離さないから。正気になるまで何時間だって抱きしめてやるし」
本当は。 何も大丈夫じゃない。
起こすことを選ぶことで颯太が受ける心の傷は想像もつかないし、捕まえられる保証もない。もしも逃がして鬼に渡ってしまったらと思うと、怖くてたまらない。
それでも見殺しにするなんて選択肢は存在しないから、それならば強気でいるしかない。
「まぁ、見てなって」
引きつった頬で強さを装う亜嵐にあわせて、涼太も声を上げて笑った。
「すごい執念」
「まぁ、そこそこ拗らせてるもんで」
全ての不安を呑み込んで不敵に笑う。
合わせた拳は震えなかっただろうか。
亜嵐は壁に映された颯太を見た。
哀しく泣く彼をこれからこの手で更なる地獄に突き落とすことを自覚して、血が滲むほどに唇を噛む。
───意地悪な俺でごめんね
心の中で、一度だけ謝った。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霙 | 作成日時:2020年3月3日 15時