検索窓
今日:9 hit、昨日:23 hit、合計:46,354 hit

ページ22




北「え……?涼太さん?」

涼「ごめんね、独りにして」

北「ねぇ、涼太さん!颯太は……?」

涼「鬼に拉致られた。……臣さんも」

北「なにそれ…!俺だけ安全なとこに隠れてズルしてるようなもんじゃん…」



何かを叩く音が聞こえる。「北人」ともう一度名を呼んだ。今度は言い聞かせるように



涼「それは結果論でしょ?でも、俺は北人が無事でよかったと思うよ。まぁ、完全に無事ってわけじゃないけどさ」

北「涼太さん」

涼「ねぇ、俺をズルいと思う?」

北「なんですか……そんなこと言ったら」



何も言えなくなるじゃん、と北人が呟いた。その声色に拗ねた感じが戻ってきて、涼太はホッと肩の力を抜いた。それから亜嵐と目を合わせて頷き合い、また表情を引き締めた。



涼「北人、颯太が命懸けで俺たちを繋いだ意味、分かる?」

北「……はい。俺が地図……っていうか図面を持ってるから、ですよね?」



北人が鼻をすすった。
もう涙は止まったようだった。
その気配に涼太の顔が少し和らいだ。いつもの力が、戻ってくる。



涼「お前さ、地図見れんの?」

北「馬鹿にしないでください」

涼「了解。頼りにしてるよ」

北「涼太さん」



北人が息を短く吐く。気合いを入れて背筋を伸ばした彼の様子が、涼太の頭に浮かんだ。



北「ありがとうございます。涼太さんと繋がったら、怖いもん無くなった」

涼「当然でしょ」



緊張感を残しながら少しだけ笑う。ハイタッチが出来ないことを物足りなく思いながら、今すべきことに頭を切り替えた。



涼「それじゃ、作戦会議しようよ」



命の期限が迫る臣、行方の知れない颯太、閉じ込められた北人、どこかで闘ってるはずの健二郎。
状況はめちゃくちゃだけど、
必ずみんな一緒に、この場所から出てやる。

北人の声に縮こまっていた強さを引き起こされた涼太は、ただ前だけを、明るくなるはずの未来だけを見つめていた。



亜「絶対、完全勝利で勝ってやる」



そのとなりで亜嵐は何かを決意したような強い目で、握ったハンドガンをサラリと撫でた。



けれど。 その時。



彼らの知らないところで、空間が歪んだ。

現れたのは、行方の知れない人。
意識を失ったままで横たわる彼を、淡い霧が包んでいた。



『次に目覚めた時、あなたは────されます。上手く逃げ切れると、良いですね』



姿なき者から低く囁かれた非情な暗示に、眠る彼の眦から涙が零れた。




───第三幕が、始まろうとしていた。


残された彼が触れた深層→←反撃の狼煙、転落の足音



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (36 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
67人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2020年3月3日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。