その扉の向こう側 ページ3
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落ち着け、と陰に隠れて呼吸を整える。
失敗する訳にはいかない。
リセットボタンはどこにもない。
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数段の階段の先に続いた古びた緋色の扉の前に立ち、六人はそれぞれに顔を見合わせた。固く閉ざされているように見えるコレを果たして本当に開けても良いものなのだろうかと。
でも、今更逃げるのも面白くない。
「開けるよ？」
臣の言葉に揃って頷いた。ホラー的展開は勘弁だけど、みんなが一緒なら大丈夫。
───どうせ、仮想の話だし。
確かにそう思いながら扉に手をかけた。両開きのその扉の一枚を臣が、反対側を涼太が引く。ぎぎ、と鈍い音を立てて重い扉が開かれた。
「マジか、これ……」
亜嵐が感嘆の声を上げた。彼らの立つ場所から、左右と正面に緋色の道が続いていた。正面は通ってきた扉よりもさらに大きな空間がポッカリと開かれており、彼らが来るのを待っているようだった。その口から見えるのは下がっていく階段と、客席と思しき椅子。
壁も照明も周囲の設備には清潔感があったが、かなり古びた感じがした。
「まだ時間、大丈夫だよな？」
臣が時計を確認しながらメンバーに言った。鬼はまだだから、今のうちにステージを確認しておこうと。
その提案に最初に動いたのは涼太と亜嵐だった。
「とりあえず、あっち行ってみようよ。広そうだし。逃げる時に使えそう」
「チェイスする気満々じゃん」
涼太の提案に亜嵐が呆れながらもあとに続く。ホールの入口に立った彼らの歓声に残りの四人もそちらに向かった。
「う、わ」
「すご」
颯太と北人が瞬きをしながら天を仰いだ。
高い天井。その中心からは大きな鳥かごのようなものがぶら下がっていた。
そしてその鳥かごを半円で取り囲むように奥行の薄いバルコニー式の客席が4階まであり、まるで音楽の教科書で見たオペラの劇場のようだと思った。
「昔は絢爛豪華でした、って感じやな」
くすんだ金の装飾に触れて健二郎がポツリと呟いた。こういうセットなのか、そういうものを移設したのかはよく分からない。
「ちょっとあそこ…なんか変じゃない？」
涼太が階段下を指さした。ステージ間近のちょうど鳥籠の真下辺り、その一角だけ座席がぐちゃぐちゃに壊れているように思えた。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえると凄く嬉しいです…！期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します！ (2020年4月21日 1時) (
レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます！これからも、楽しみにしてます！ (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霙 | 作成日時：2020年3月3日 15時
