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勢いよく顔を上げ、柱の影から出る。

彼がいるのは三階フロアのバルコニー席に繋がる廊下。いくつもの扉が並ぶ光景は、選択を彼に迫っているようだった。

颯太は走りながら、飛ばされる前にホールから見た景色を頭に思い浮かべ、鳥かごへ向けて最も届けやすい場所を考えた。
現在地は曖昧だったけれど、そこは自分を信じるしかなかった。

遠くで鬼の怒号が聞こえる。 後戻りは出来ない。



「ここ!」



選んだ扉を勢いよく開き、颯太は中へ飛び込んだ。

広くはない空間。 壊れた座席に赤茶けたシミに顔を顰める。 踏み込まれたら逃げ場はないと覚悟した。

鳥かごは彼の位置から斜め上方の場所にあったけれど、中の様子は底板が邪魔してわからなかった。



「北人さん!!!」



できる限りの声で叫んだ。 その声で見つかることも、覚悟の上。



「北人さん!今からそっちにボールを投げるから!!受け取って!!」



懸命に呼びかけると、カゴの隙間から手が伸びた。
分かったというように、ピースサインを描く。



「できる。僕なら絶対にやれる」



想いを込めて彼がカプセルを放ったのと、扉が破壊されながら開かれたのはほぼ同時だった。



「届いて……っ!」



反射的に破裂音に萎縮して投げられたカプセルは、理想した放物線よりも弱い軌跡を描いてしまう。
背後に迫る危機を振り返りもせず、颯太は祈りながらその行方を見つめた。

そんな彼が見守る中、必死に伸ばされた北人の手が、落ちかけたカプセルを意地でキャッチした。


▽→←自己犠牲の花の色



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(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年3月3日 15時

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