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「颯太!!?」
『………叫ばないでください。耳が壊れる』
「戻ってこい!今すぐ!!」
不機嫌な苦情を無視して亜嵐はさらに叫んだ。
胸が痛くて叫ばずにはいられなかった。
『……嫌ですよ』
けれど、颯太はどこまでも塩だった。
今だけじゃない。
この手を離れてからずっと。
思う通りになったことなんて全くなくて。
だからこちらも次第に煽るようになって。
「なんでだよ!怖いんでしょ?!なんで捕まりに行ってるんだよ!」
『怖いですよ?でも、別にわざと捕まろうとしてるワケじゃないです』
「え?」
『ちゃんと戦うつもりもあります。僕は亜嵐さんと違って感情のないロボットだから、撃つことに抵抗はないんです。だから安心してください』
その言葉に"撃つのは無理だ"と諦めていたことを見抜かれていたと知る。
最初からアテにされていなかったのかと、胸の痛みが増す。
そんな亜嵐の気持ちを受け取ることはせず、颯太はさらに続ける。
『あぁ、だけど、もしも捕まったら、その時はサクッと見捨ててください』
亜嵐は、自らのシャツの胸のあたりをぎゅっと握った。
アイツは、言葉で俺を殺す気なんだろうか。そんなことを思い、歯を食いしばった。
『僕は相手のやり口を知ってるけど、臣さんは違うから。だから、臣さんを助けてください』
それは、客観的には正しい判断なんだろうと思った。
だけど、亜嵐は頷けなかった。
頷きたくなかった。
それなのに、アイツは何も分かってなくて。
『平気ですよね?アナタは僕が嫌いだから』
何をどうしたら、そうなるんだろう。
どこで何を、間違えていたのだろう。
そんなことを、こんな時に知るなんて。
『僕は、それでも好きで…………っ!』
そして、唐突に繋がりが切れた。
「颯太!おい、返事しろよ!!颯太!!なぁ!!?」
亜嵐をどこまでも置き去りにして。
なんの否定も、反論もさせないまま。
どれだけ呼びかけても戻らない通信。
少しも落ち着けず、部屋の中をウロウロと歩き回っていた亜嵐は、ある場所で立ち止まった。
目を見開き、震えた手で見つけてしまった"それ"を手に取った。
キャビネットの上に、さりげなく置かれたままのハンドガン。
「ウソつきじゃん、お前……」
亜嵐は冷たいそれを抱きしめて、その場にひとり蹲った。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます!そう言ってもらえると凄く嬉しいです…!期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します! (2020年4月21日 1時) (レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます!これからも、楽しみにしてます! (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:霙 | 作成日時:2020年3月3日 15時