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臣「子供部屋……？なんでこんな所に？」
上がった息を落ち着かせながら、臣が呟いた。それからチラリと健二郎に視線を移し、強ばっていた頬を少しだけゆるめた。ふぅ、と音を立てて息を吐き出す。
臣「健二郎くん。……俺は健二郎くんが好きだよ」
健「臣ちゃん……？」
場に似合わない柔らかい言葉に、健二郎が沈んでいた顔を上げる。臣は扉に背を預け、真っ直ぐに前を見ていた。
臣「健二郎くんが他の人になる必要は無いんだよ。健二郎くんには、健二郎くんにしかできないことがある」
近づいてくる、足音。
臣「俺は優しい健二郎くんが好きだから、これで良かったと思う」
臣はそっと後ろ手にドアノブを握った。
臣「俺は、信じてるよ」
健「臣ちゃん？」
臣「信じてる」
臣は健二郎を見つめた。そして目を細めて笑った。そのままさりげなく背後に隠した手首を動かした。
臣の真意がわからなかった健二郎は、その動きを一切予測できていなかった。
だから、臣が自らの作った小さな隙間にするりと消えた時も、何が起こったか直ぐには理解できなかった。
「え……？えっ？！臣ちゃん！！」
一瞬の間のあとに、状況を理解して全身の毛が逆立った。慌てて震える手でドアノブを掴んで乱暴に扉を開いた。
その先に広がった光景は。
「……ウソやろ……？」
水の入ったペットボトルを手にした臣が、鬼に向かって戦いを挑むように走っていくところだった。
「やめろぉぉぉおお！！！」
健二郎は必死に手を伸ばし走ろうとした。
けれど、足がもつれて上手く進めず、焦って転んでしまう。
そんな彼の目の前で、臣が精一杯の武器を手にした手首を捕えられ、その背が激しい音を立てて壁に叩きつけられた。
目を閉じた彼が、ずるりと崩れ落ちていく。
「臣ちゃん！！！」
悲痛に叫ぶ健二郎に鬼がちらりと視線を向け、ニヤリと不気味に口角を上にあげた。
その鬼は満足気な顔でぐったりとした臣に近づくと、意識のない彼の身体を軽々と肩に担いだ。
そして。
忽然と姿を消した。
「臣、ちゃん……？」
幕間のような静寂が訪れる。
誰もいなくなった空間に、健二郎の呟きだけがポツリと堕ちた。
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霙(プロフ) - かたはまさん» コメントありがとうございます！そう言ってもらえると凄く嬉しいです…！期待に応えられるように頑張りますね、これからもよろしくお願い致します！ (2020年4月21日 1時) (
レス) id: 1c76571629 (このIDを非表示/違反報告)
かたはま - すごい面白くて、世界観に引き込まれます！これからも、楽しみにしてます！ (2020年4月18日 23時) (レス) id: 9a78e2b3a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：霙 | 作成日時：2020年3月3日 15時
