隣部屋の王子様６【月島蛍】 (ページ19)

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sweetandsour…119 ページ19

息を切らし汗を流す彼女。
もう何事かと思った。

部活じゃあるまいしさぁ…
この気温で走るとか本当馬鹿。

「はー…さっぱりした。」

“た、体調は？”

何で走ってきたのかおおよそ検討は付いている。
あんな必死な顔されたらね…
分からないほうが可笑しいと言うか…

「まずはおかえり。」
「…うん。ただいま。」
「何で走ってきたの。」

分かりやすく目が泳いだ。

「突然青春したい衝動に駆られたといいますか…」
「一人で青春して楽しかった？」
「ま…まぁね。」
「良かったね。で、本音は？」
「うぐ…」

「吐きな。」
「蛍が…心配でした。」
「だろうね。見当はついてた。」
「じゃあ聞かないでよ…」
「Aが嘘つくからでしょ。」

あのやり取りは冗談のつもりだったんだけどな…
別に彼女を困らせたかったわけじゃない。

「まあ…あれは僕も悪かったけどさ。」
「だ、だよね。」
「こら。口答えするな。」
「ご、ごめんなさい。」

今日の天気は快晴。
部活でもあるまいし第一に水分補給も碌にせず
ここまで走ってきたら熱中症になりかねない。

自分のペースも知らないだろうしね。
どうせがむしゃらに走ってきたのだろう。

「ほら、ちょっと来て。」
「？」
「ここ座って。」
「うん？」

彼女をソファに座らせる。

「髪拭いてあげる。」
「え、いいよ…！」
「走って疲れたでしょ。座ってて。」

このくらいやらないと僕の気が済まなかった。

「あ、ありがとう。」
「君さぁ…心配性すぎるんだよ。」
「それはいい勝負だと思うけど。」
「…問答無用。」

僕がいつ心配性なことしたんだよ。
彼女は本当に危ういのだ。
いつか自分を犠牲にしそうで見ていられない。

「君本当に無理しないでよね。」
「してないよ。」
「同居人が行き倒れたとか普通に事件だから。」

110や119が冗談ではなくなってしまう。

「ご飯食べれた？」
「うん。皿は洗ってある。」
「助かる～。ありがとう。」
「別に当たり前じゃん。」

いつもは僕のほうが遅いから機会がないだけで。

「…掃除も洗濯も一応してあるよ。」
「えー！身体酷かっただろうにありがとう！」
「べ、別に…」

暇だし。
やる事なかっただけだし。

ちょうど夕飯でも作ろうかと思ってたところだった。

「夕飯は何食べたい？昨日の余り物もあるよ。」
「温めるだけなら僕やるよ。」
「じゃあ後は作り置きで今日は楽しちゃおう！」
「いいね。賛成。」

彼女も休む日くらい必要だよね。