sweet*and*sour…115 ページ15
“どういたしまして”
優しく微笑む彼女。
あーやだ。本当にやだ。
これだから嫌なんだよ彼女は。
従わざるを得ないというかさ。
敵わないなんて思いたくはない。
「薬飲めた？」
「うん。」
随分と心配してくれているが
看病は意外とテキパキしている。
…狼狽える割にちゃんとしてるじゃん。
結局上手いこと食べさせられるから
出されたもの全部完食しちゃったし。
「辛くなったらすぐ言ってね。」
「…言うから救急車はやめて。」
「状況による。」
「大袈裟だな。ただの風邪だし明日には治ってるよ。」
「甘く見ちゃだめだよ。明日は学校休んでね。」
「は？」
「ちゃんと治してからにして。」
僕が現在手に持っている体温計の表記は【37.8】。
元々体温が低い僕からしたら結構な熱だが
熱冷ましで調整できる範囲だろう。
「熱が下がれば大丈夫だよ。」
「駄目。」
「マスクもすればいいし。」
「それでも駄目。」
彼女は頑なに意見を曲げない。
反論しても曲がる気配は皆無。
「君が想像している以上に僕平気だと思うよ。」
「駄目。」
「学校くらい行けるってば。」
「駄目。」
「…じゃあ部活は休むから。」
「駄目。」
このクソ強情…！！
自分でも妥協したつもりだったのだが
彼女は絶対に学校へ行かせてくれないらしい。
「勉強遅れちゃうなー？」
「…だ、駄目！」
彼女が妥協しかかったがこれは駄目だな。
折れてくれる気がしない。
“蛍、平気？” “蛍！大丈夫か！？”
「(他人のはずなのにね。)」
ふと蘇る幼い頃の母と兄の声。
心配そうに僕の顔色を伺ってきてた。
僕も兄ちゃんが寝込んでいるときは
心配で部屋の前から離れなかったっけ。
「…はあ。分かった。今回は僕の全面敗退。」
「うん。明日はゆっくりしててね。」
「はいはい。」
山口には後で連絡すればいいか。
多分山口からの返事も心配の嵐だろうな。
「あーお腹いっぱい。」
お腹が膨れて再び眠気に襲われる。
「眠いなら寝ていいよ。」
「そうする。」
「私出て行くからゆっくり寝ててね。」
食器を片付けだす彼女。
「…あ…」
“もう？”と出かかった言葉を飲み込んだ。
弱ると心細くなると言うし、きっとそのせい。
…誰かが傍に居るなんて煩わしいだけだろ。
「おやすみなさい。」
「…ああ、うん。おやすみ。」
「明日はゆっくりしててね。」
「何回も言われなくても分かってるよ。」
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作者名：愛羅
| 作者ホームページ：
作成日時：2014年9月4日 18時
