感謝をこめて 〜作者登録200人突破記念〜

5　タイプの子（FKi） ページ6

男の人に言われるということは、もしかしたら藤ヶ谷もそう思ってくれる可能性があるということだ。




「ありがとうっ！」



「っ・・・///あの・・北山さん、」



少々気恥ずかしかったが、素直に頭を下げると目の前の彼が何か言いた気に口を開く。なんだろう、と首を傾げたとき、体がぐらつくほどに強い力で後ろに引っ張られた。びっくりしたのは彼も同じだったようで、目を真ん丸くしている。





「北山」





耳元に届いた声は聞きなれた男の声。なんだかいつもより声が低いような・・・、後ろを振り返ろうとして気づいた。前に立っていた同じクラスの彼の顔がだんだん青褪めていっている。具合でも悪くなったのか、声をかけようとしたら早足で去っていってしまった。




「あ・・・行っちゃった・・・」



「・・・あれ誰？」




「同じクラスの人だよ・・・ってかいきなり引っ張らないでよ、びっくりしたっ！」



高鳴る心臓をなんとか押さえ込みなるべく冷静さを保って振り向く。掴まれた腕が熱くて、触れ合う皮膚同士が恥ずかしくてたまらなくて振りほどこうとするが解ける様子は全くない。藤ヶ谷の顔はいつになく真剣で、もしかして、と淡い期待を抱いてしまった。




自分の小さな変化に・・気づいてくれたのではないかと。





「・・・なに？彼氏なの？」





だけど、真剣な表情で期待させるだけさせた藤ヶ谷の口から零れだしたのは、予想もしていなかった言葉。あまりに見当違いなそれにぽかんと口が開いてしまう。さっき、“同じクラスの人”だといったのは聞こえていなかったのだろうか。







「おい、北山っ！」





「藤ヶ谷の・・・バカっ」





消え入りそうなほどの言葉に今度は藤ヶ谷がぽかんと口を開いて呆然としている。本当になぜその言葉を零されたのか分からない、という表情に苛立ちよりも悲しさを覚えた。





髪型を変えた、制服の丈が少し変わった、それだけの、たった少しの変化だ。だけど、どこか期待していて・・・“可愛い”と思ってもらえるんじゃないかって。




自分の勝手な期待であって、藤ヶ谷は悪くないのに、こんな感情を抱いてしまう自分自身がイヤだ。





やっぱり付け焼刃だったんだ。見た目だけ着飾ったって、中身はこんなに可愛くない・・ドロドロした醜い部分を持ってるんだから・・・。

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