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魔法使い ページ9

1人、その場に残された貴方は、
すぐ近くにあった扉に目を向けた。

魔方陣のような、
見たこともない記号や文字のようなものが刻まれた綺麗な扉。

神秘的な雰囲気を出すその扉に、
貴方は好奇心をくすぐられ、そっと手を伸ばした。

触れたその扉は、貴方の入室を拒むことなく、
静かに開き、貴方を導いた。

そして

扉の向こうに現れた光景に、貴方は驚いて目を見開いた。

ぎっしりと詰まった本棚に収まっていた本が、
音もなく飛び出して、ふわりと宙に浮いている。

宙に浮く、何冊もの本は、ひとりでに開き
パラパラとページを捲っている。

その光景を見つめて固まる貴方に
――小さな笑い声が届いた。

視線の先には、微笑みを浮かべる男の人がいた。

「こちらへ。どうぞいらっしゃい」

穏やかなその声に、貴方はゆっくりと近づいた。

「初めまして。人間さん」

そう言って、
目の前の男の人は小さく頭を下げた。

貴方が名前を聞こうとする前に、
男の人はスッと片手を軽く上げた。

それと同時にパッ、と目の前に
――ぬいぐるみが現れた。

驚く貴方の前で、現れたぬいぐるみが礼儀正しくお辞儀をする。

「私は――“魔法使い”」

少しだけ楽しそうに笑いながら、
男の人――魔法使いは言った。

「私の物語も、聞いていかれますか?」

その言葉に、貴方は小さく頷く。

すると、魔法使いは微笑んだ。

「では、どうぞご着席を」

魔法使いの言葉に、
ぬいぐるみがスッと指し示した先を見ると、椅子があった。

貴方が椅子に向かおうと足を一歩踏み出した時、
視線の先の椅子がふわりと動く。

周りに浮かぶたくさんの本と同じように、
まるで自分の意志を持っているような動きで、
椅子は、貴方のそばに静かに舞い降りた。

その椅子に、貴方は静かに座る。

ぬいぐるみに視線を向けると、
いつの間にか、ぬいぐるみも貴方と同じように
小さな椅子に礼儀正しくちょこんと座っていた。

魔法使いは、着席した貴方を確認して
宙に浮かぶ本を一冊、手に取った。

「さぁ、お客様に物語を――」

そう言うと、その本の中から
――文字が飛び出してきた。

それは本の中の物語の文字で。

空中に綺麗に整列した文字を、
魔法使いは穏やかな声で静かに読み始めた。

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ユイ(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね…。なぜか涙が溢れてきます(つд⊂) (2016年4月24日 21時) (レス) id: 3183564049 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アクア | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/furanandberulove/entry-12121019747.html  
作成日時:2016年4月23日 15時

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