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.。oO嘘つきの話Oo。. ページ7

けして治らない病気
――不治の病。

そんな病気にかかった幼い女の子。

物心ついた時からずっと入院生活。

お金もある。
優秀な医者もいる。
医療道具も器具も、薬も揃っている。

なのに――治療法がない。

だから女の子は――生きられない。

女の子の両親も、医者も、
その事実を誰も口にしなかった。

もちろん、女の子も知らなかった。

あと数日。
いや、もしかしたら
今すぐにでも死んでしまうかもしれない女の子。

「元気になったら、お外で遊ぶの!」

自分の運命を知らない女の子は、今日も無邪気に笑う。

だから――

「きっと元気になるわ」

両親も

「すぐに外に出られるよ」

医者も

そう言って――嘘をついた。

そんなある日。
女の子の元に、1人の青年がやってきた。

「今日からキミの担当医になったんだ。よろしくね」

青年は女の子に微笑み、そっと頭を撫でた。

その日から、青年は女の子のそばにいた。

「はい。今日のお薬だよ」

青年はそう言ってコップに入った“ジュース”を差し出した。

薬も、注射も、何もかも。
もう――女の子には必要なかったのだ。

そして――

「・・・身体が、動かないの」

ベッドに横になったまま、女の子は不安げに呟いた。

青年は優しく微笑み、女の子の頭を撫でた。

「大丈夫だよ。次に目が覚めたらきっと――」

言葉の途中で、青年は――静かに涙を流した。

「きっと、元気になるからね」

青年の言葉に、女の子は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「本当に、起きたら病気、治ってるかなぁ?」

わくわくしたようなその声に、青年は精一杯の声で答える。

「うん、きっと。だから、目を閉じて。ね?」

青年の優しい言葉に、女の子はゆっくりと目を閉じた。

青年の瞳からは涙が溢れ、床に流れ落ちていく。

「ごめん、ごめんね・・・・」

――青年は、“嘘つき”だった。

担当医も嘘

薬も嘘

女の子が“元気になる”も“病気が治る”も全部、全部、嘘だ。

「キミが笑ってくれるなら、どんな酷い嘘でも言うよ」

青年は――嘘を重ねて、女の子の笑顔を守り続けた。

天使のような笑顔で眠る女の子に、青年はそっと手を伸ばした。

女の子の冷たい身体に。

女の子の――止まった心臓に。

「どうか・・・・安らかな、永遠の夢を」

涙声で呟いたその優しい声は、
――誰にも届くことはなかった。

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ユイ(プロフ) - 本当に素敵な作品ですね…。なぜか涙が溢れてきます(つд⊂) (2016年4月24日 21時) (レス) id: 3183564049 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アクア | 作者ホームページ:http://ameblo.jp/furanandberulove/entry-12121019747.html  
作成日時:2016年4月23日 15時

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