嫌味な先生 2 (和牛:水田さん) (ページ35)

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教室をのぞくと

そこにはもう
教壇の椅子に座る水田先生がいた。

ビシッとしたスーツ。

いつもとは違ったその姿に
不意にもドキドキしてしまう。

『スーツも意外と似合うんですね』

水田『っ……

びっくりするやん。いきなり…』

『ぷよぷよ体型だから
あんまり似合わないと思ってました』

水田『え、めっちゃ挑発してくるやん』

『冗談ですww』

この緊張とドキドキを紛らわすために
余計な事を言ってしまう。

でも、水田先生は
それさえも見抜いているかの様に
私に笑顔を向けてくれた。

水田『1年間で楽しかった事は？』

『え？……う〜ん……なんだろ…』

考えながら、教壇の前の席に座る。

水田『体育祭とか文化祭は？』

『それも確かに楽しかったかも…ですけど

ん〜……何だかんだ私は

……保健室で、
賢ちゃんとか水田先生とかゆず兄達と
ワイワイ話してる時が楽しかったかも…』

水田『………そうか』

『……先生は？』

水田『俺は今。』

『…え？1年間の中でですよ？』

水田『うん。』

『何でですか…？』

水田『好きな人がやっと卒業したから。』

『っ……』

水田『今までは、教師と生徒やったから
俺から気持ちを伝えるのはあかんかったけど

卒業したらそんなん関係なくなるやろ？

まぁあとは…
その好きな人の返事次第やけど。』

『…………』

先生の一言一言と柔らかな表情が
胸の鼓動を加速させる。

水田『俺の恋人…なってくれへん？』

色んな意味や思いがこめられたその言葉に、
｢はい｣だけで返して良いのか。

長い間、我慢してきたこの気持ちを
やっと解放できるようになった今

どんな言葉を使えば全部伝えられるのか。

色んな思いが駆け巡る中、

結局私は言葉さえも出せず

涙を堪えてただ頷くことしか出来なかった。

先生は教壇から降り、

私の座る席の横に来て

優しい笑顔で｢A｣と両手を広げた。

私は堪らず、その胸に飛び込んだ。

ギュッと抱きしめ合うと、
涙が少しだけ溢れてしまった。