愛言葉と相執【はじめしゃちょーの畑】

reel-11 ページ12

「ふくしゅっ、っ」

くしゃみがまた出た。

暖房が効いていた部屋からでるとやっぱりまだ肌寒い。




階段を降りてビルの外へ出る。その向かいにようへいはいた。



「ごめん！お待たせ…！」

「ん、お疲れ様」



なんとか9時前には作業を終わらせることができた私。





この一週間気を張っていたからなんか反動で緩んでしまうなあ。

そのせいか、足元が少しふらふらしてしまう。

やっぱり風邪ひいてるかもしれない。








そう思いながら足を進めていると途端ようへいの顔が覗き込んできた。

「え、な、なに？」






「……もしかして、体調悪い？」

「……え」




しどろもどろしているとやっぱりとでも言いたそうな顔でようへいは足を止めた。





「なんか鼻声だし、足ふらついてるし、目の下クマできてるし。働き詰めでろくに寝てないんじゃないの」



「でも、」



「でもじゃないですー。今日はやめとこう。車貸してもらって来てるし送るからさ」




ほら、カバンも頂戴と答える前に受け取られる。



「ごめんね…」

「気にしないの。無理が一番よくないから。ほら、乗って」




車のドアまで開けられ随分過保護だと思うと同時になんだか慣れなくて照れてしまう。



火照った顔を気づかれないように口元を手で覆いながら車内に入る。



ナニコレ、ほんとに照れる。





マンションの下まで送ってもらい、カバンを受け取る。





「ありがと、助かりました」

「いえいえ、何かあったら言うんだよ。女の子なんだから」





女の子なんだから、その言葉に冷えてきた頬にまた熱が集まっていくのを感じた。


悟られないようにわかった、と大きめの声で叫ぶように言った。


気をつけてねと言って車が去っていく。









熱が、ひかない。






ようへいが女の子扱いしてくるの。






慣れなくて、気恥ずかしくてもどかしい。







ねえ、ようへい。へんだよ。



待ち合わせの時間より早く来て、お店も探して予約していてくれて、店の扉は入る時も出る時も開けてくれて、知らない間に会計してたり、身長もちょっと伸びてて、家まで送ってくれて、変に手握ったり、会社まで迎えに来てくれたり、毎週ご飯行こうって言って、少しの変化に気づいたりなんかして。



これじゃあ、まるで、


まるで、








 








 


本当に付き合ってるみたいじゃん。



知らない。私の知らない、ようへい。


知りたい、でも怖い。


複雑な気持ちが心を渦まかせた。

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