愛言葉と相執【はじめしゃちょーの畑】

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「付き合ってよ、A」



8年ぶりに聞いた初恋の人、もとい幼なじみの言葉に耳を疑った。


何言ってんの？


その一言が言葉にならなかった。


なんでだろう、呆れて声が出なかったのかな。


「酔ってるでしょ」

「酔ってないよ」



嘘だ、酔ってる。お酒を飲んでる貴方にあったことは無いけど。


「ねえ」




心臓がドキリと打つ。昔からこの甘い声にはめっぽう弱いものだ。





「付き合ってくれるの？」





電話越しのくぐもった声はやっぱり熱を帯びてて芯が入ってないのが丸わかりだ。


酔ってるのなら、きっと冗談なのか、明日には忘れるかするだろう。




26歳の女に酒の勢いで付き合おうなんて、冗談でも笑えない。





なら、こっちも意地悪してやる。


「いーよ」


「…え？」


「いいよ、って言ってるの。付き合ってあげる」



あ、と何か口を挟もうとしていたがそのまま続ける。




「お母さんに聞いたよ、今静岡住んでるんでしょ？


実は私も仕事の都合で今年静岡に引っ越したんだ。



だから、久しぶりに会おうよ。

仕事終わり…6時頃に静岡駅の前で待ってるね」


「え、あの、A」







高校卒業後初めてかかってきた電話は、私の人差し指によって容赦なく切られようとした。


気なんてもうない。本当にただの意地悪。


通話時間はたったの1分未満だ。






「じゃあ、明日ね。ようへい」

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