【短編集】 春夏秋冬四季折々 【名探偵コナン】

夏の日　海の浜辺　安室さん�� ページ8

「いっいつからそこに!?」
「いつからだと思います？」

にやりとわざとらしい笑みを浮かべる安室さん。
もしも最初っからだと思うと……恥ずかしいったらありゃしない。

「にしても、Aさん。肌がきれいで白くて羨ましいです。僕なんかこんな色ですから」

男の人にそんなことを言われるのは初めてなもので、心の奥がフワッとする。
くすぐられるような、まさぐられるような、そんな感じ。

「安室さんも、褐色肌いいと思います、私は。寧ろ好きです!」

何を血迷ったか、『好きです』という単語を出してしまった。
え、いや、その『肌が』って意味だから、うん、そうだから、と自分で言い聞かせる。


「そういわれるととてもありがたいです――でも白い肌の方がやはりいいですよ」
「……？ どうしてです？」

謎の安室さんの白い肌推しに少々疑問を抱いてしまった。
キョトンとする私に安室さんは微笑んで――そして次の瞬間。


――ぎゅ、と私を抱きしめた。

突然のことで頭が困惑した。え？ え？ え？ 夢？


「ちょ、え、安室さん!? きゅ、急に……」

一人慌てる私をよそに安室さんはこう囁く。



「だって白い肌の方がキスマークが映えるじゃないですか？」


背中に回された手が、すすす、と背筋を首筋を撫でる。
ヒヤリと恐れながらも、どこか気分が高揚しているのが分かった。


「あ、あむろ、さん？ どういう……」

ようやく絞り出した言葉がそれだった。
すると彼はそっと私から離れて、「冗談です」と微笑んだ。


――冗談かあ、とショート寸前の頭で言葉を反芻する。
ほっと胸をなでおろすような、なんか残念なような。


さっきの安室さん、いつもと全然違って……でもかっこよかった……。


「Aさん？ ボーっとしてると、またはぐれてしまいますよ」

「え、あああ、すみません……！！」

「それに、ナンパなんかに摑まっては大変ですし、やはりつけるしかないですね」

「何を？」「キスマーク」


間髪入れずに彼はそう答えた。
一瞬止まって私は「んん〜〜〜」と変に悶えてしまった。


「冗談ですって。君は本当に……からかい甲斐がある。面白い子だ」


また優しく笑う安室さん。

――てっきり、安室さんに好意があるのは私の方だけだと思っていた、けど。

もしかして……そうでもない！？ のかな。



暑さに酔ってしまった、ひと夏の、勘違い。

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