嘘をもうひとつだけ《iwfk》

デート ページ38

深「おぉ〜着いた…！」


『だね、じゃあ最初は…』


深「もちろん！クレーンゲームっ！」


『ブレないなあ(笑)じゃあ行こっか。』


うずうずしているふっか、もといふうかちゃんとゲームセンターコーナーに向かう。


今日は遊園地に来ている。所謂デート。


あれからメールによる俺からの押せ押せアプローチのもと、見事にこのデートにこぎつけることに成功した。

今日もふっかはしっかり女装してくれている、この前よりカジュアルな格好のふうかちゃん。

ラフな格好の中でも女の子らしさ(男だけど)が滲み出ている今日のふうかちゃんは特に俺のドタイプすぎて喜びを隠すのにもう必死。



そして俺には目もくれずに当の本人は目の前のクレーンゲームに夢中だ。


深「はいこれも！あげる！」


あっという間にぬいぐるみたちを救出してひとつずつ俺の腕の中におさまっていく。


ふっかのクレーンゲーム姿を見るのは初めてだったからこそ、そのかなりの技量にあっけらかんとしていた。


しばらくして俺の様子に気づいたふうかちゃんは慌てて手の動きを止める。


深「ご、ごめん。わたしだけ楽しんじゃって…。

あ、よかったらそのぬいぐるみ照さんにあげる。…いらなかったら、」


『えーありがとう。嬉しい。』


ふっかが取ってくれたもの。ふっかからのプレゼントが嬉しくて思わず顔が綻んでいるのが自分でも分かる。



『楽しいね、ふうかちゃん。』



ぽっと顔を赤らめる目の前の女の子はもうふっかにしか見えなくて。



違うのは、見た目と名前。それだけ。


…あとはいつも以上に素直になれる、自分自身。


頑張ってデートに誘ってよかったなぁと柄にもなく健気なことを思ってしまう。




深「っ…、じゃあ次は照さんが行きたいとこ行こ！」


『うーんどこでもいいよ…お化け屋敷以外。』


深「え…あ、」


言おうか迷ったけど、一応小さく呟いたのを聞き逃さなかったふうかちゃんは何かを思いついたようににやっと笑う。


いや、うん。可愛いけどね？いたずらっ子なその顔も。



深「あれぇ、照さんもしかしてお化けとか、」


『いや、いけるよ。全然行けるけどね。…行くならあと３時間待って。心の準備いるから。』


深「あはは(笑)かわいいなあ〜！」


太陽みたいな笑顔で笑うふうかちゃんは、最近ふっかの姿では見れなかったもので。



苦しい程にきゅうんと胸が締め付けられた時、


いつの間にか薄曇りになっていた空から雫が落ちてきた。

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