嘘をもうひとつだけ《iwfk》

こじらせて嘘 深澤side* ページ1

深澤 side*



今日も朝の準備をしながらニュースを流し見る


――――「なるほど、生物学的観点からだと“生物上で唯一嘘をつく生き物が人間”…ということでしょうか？」――――



『…ふーん。』



―――「そうです。生きるために賢い知恵を働かす動物は沢山いますが、人間には交友関係や恋愛感情において意図的に“嘘”をつく場面がありますよね。まさに人間ならではの行動です。」



「さらには、嘘を隠すには――、」


どこかの大学の教授の解説の途中でプツン、とテレビを消して支度を始める



『嘘、ねぇ…。』



ワックスをつけてネクタイを締めてスーツの上着を羽織る。

そんで、鏡の前で最終チェック。



…うん、今日もまぁまぁいけてんじゃん。


昨日家で作った資料をカバンに入れて家を出る、そして歩きながらグミを食べる。

そこまでが俺のいつものモーニングルーティン



トイレの電気消したっけなぁ…とか考えながらいつもの時間のいつもの電車、いつもの車両に乗る。




岩「あ、ふっか、おはよ。」



『おう、おはよ。』




ドアの近くでイヤフォンを外し始めるこのマッチョ大男は、同じ会社で働くひとつ下の後輩、岩本照。



会社から俺より２駅遠い場所に住んでいるこの男と毎日電車の中で待ち合わせをして一緒に通勤するのが日課になっている。



岩「ふっか、朝のニュース見た？」



『うん、見たよ。今日もかわいかったなぁ〜お天気姉さん。』



岩「…そこじゃねぇし。“人間の不思議特集”だよ。嘘の話してたろ。」


まじでチャラいよな、お前。と言って少しむっとする照。なんで拗ねてんだよ。



『あぁ、見た見た。人間しか嘘はつかない〜、ってやつだろ？

でもなぁー嘘って便利なんだよなぁ。用途しっかり守って使ったらめっちゃ強い武器になるし。』


岩「…営業の鑑みたいな発言だな。」


『あったりまえだろ！営業部トップ舐めんなよ？うぉっ、』



その時、ガタンと大きく電車が揺れて身体が傾く


通勤ラッシュで混みあう電車の中、人にもまれて押しつぶされそうになる



『やばっ……


…え？』



岩「ふっか、ひょろすぎ。」


気付けば照に腕を引かれてドアの一番近いところまで来てた。

ついでに照の大きな身体が人ごみの壁になってくれていて、俺の方にあるドアに手をついて…所謂壁ドンというやつ。



『ご、ごめ…』


岩「いーけど。ちゃんと飯食ってる？」



痩せすぎて心配なんだけど、と真剣な表情の照。

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